宮崎県人権施策基本方針
1 内容について(各章ごとの内容)
第1章 はじめに
その結果、令和4(2022)年に県が実施した「人権に関する県民意識調査」では、「宮崎県が人権が尊重される県になっているか」との問いに対し、肯定的な回答が48.0%となっており、前回調査(平成30年:41.9%)を上回るなど、一定の成果がありました。
一方で、同和問題をはじめ、女性や子ども、高齢者、障がいのある人、外国人等に関する人権問題に加え、インターネット上での人権侵害や性的指向・性自認等を理由とする差別・偏見など、社会情勢の変化に伴う新たな人権問題も生じています。
加えて、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う、感染者やその家族、エッセンシャルワーカー[1]等に対する差別や誹謗中傷が深刻化する状況を踏まえ、県、市町村、県民等が力を合わせて、お互いの人権を尊重し合い、あらゆる差別を解消し、誰もが自分らしく生きていける平和で豊かな社会を実現していくため、令和4年3月に「宮崎県人権尊重の社会づくり条例」を施行しました。
この条例に基づき、現在の人権問題に的確に対応し、本県の人権施策を総合的に推進するため、推進方針の内容を見直し、「宮崎県人権施策基本方針」(以下「基本方針」という。)を策定するものです。
[1] エッセンシャルワーカー:医療や介護、福祉など社会インフラを維持するために必要不可欠な労働に従事する人。コロナ禍において、その重要性が再認識された。
お互いの人権を尊重し合い、あらゆる差別を解消し、
誰もが自分らしく生きていける平和で豊かな社会の実現「宮崎県人権尊重の社会づくり条例」は、その前文で「世界人権宣言においては『すべての人間は、生れながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である』という人類普遍の原理がうたわれており、日本国憲法においては基本的人権の尊重と法の下の平等の原則が定められている」とし、「様々な人権問題を解決するため、私たちは、ふるさとの豊かな自然と温暖な気候に育まれた思いやりと温もりのある県民性を生かし、県、市町村、県民等が力を合わせて、お互いの人権を尊重し合い、あらゆる差別を解消し、誰もが自分らしく生きていける平和で豊かな社会を実現していく必要がある」としています。
基本方針は、条例に基づき、人権施策の総合的な推進を図るために策定するものであることから、上記のとおり目標を定めます。
基本方針は、本県の人権施策の推進に当たって、次の性格をもつものとします。
- 人権教育・啓発推進法の趣旨を踏まえ人権教育・啓発を総合的かつ効果的に推進するために策定するものです。
- 「宮崎県人権尊重の社会づくり条例」第8条に基づく人権施策の総合的な推進を図るための基本となる方針です。
- 宮崎県総合計画の部門別計画として位置付けられています。
(1) 国際社会の動向
20世紀、人類は二度の世界大戦を経験して、大量虐殺や特定民族への迫害などの人権侵害や人権抑圧に対する反省から、平和の大切さを学び、人権の尊重が平和の基礎であるという教訓を得ました。
そして、世界の平和を願って昭和20(1945)年に国際連合(国連)が結成され、昭和23(1948)年の第3回国連総会で生命・身体の安全その他多くの基本的人権についての基準を示した「世界人権宣言」が採択されました。
その後、この宣言に法的拘束力をもたせるため、「国際人権規約」をはじめ「人種差別撤廃条約」(あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約)、「女子差別撤廃条約」(女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約)、「児童の権利条約」(児童の権利に関する条約)など人権に関する国際条約が採択されたほか、国際婦人年(国際女性年)[1]や国際児童年[2]、国際障害者年[3]を定め、人権が尊重される社会の実現に取り組んできました。
また、平成5(1993)年にウィーンにおいて世界人権会議が開催され、「現代社会の諸問題の解決には人権意識の徹底・人権教育が不可欠であること」などが確認され、翌年の第49回国連総会において、平成7(1995)年から平成16(2004)年までを「人権教育のための国連10年[4]」とすることを決議するとともに行動計画を示し、人権という普遍的文化が構築されることを目指して、世界各国において国内行動計画を策定するように求めました。
[1] 国際婦人年(国際女性年):昭和50(1975)年は、国連により「国際婦人年」とされ、女性の地位向上のため世界規模の行動を行うことが提唱された。
[2] 国際児童年:児童権利宣言採択20周年にあたる昭和54(1979)年は、国連により「国際児童年」とされ、児童に対する社会の関心の喚起を図るため、多くの国でキャンペーン活動や記念事業が展開された。
[3] 国際障害者年:昭和56(1981)年は、国連により「国際障害者年」とされ、障がい者の「完全参加と平等」という目標の実現に向け、世界各国で障がい者の社会生活の保障と参加のための取組が強化された。
[4] 人権教育のための国連10年:平成6(1994)年12月の国連総会において、平成7(1995)年から平成16(2004)年までの10年間を「人権教育のための国連10年」とすることを決議し、世界をあげて人権の尊重される社会の実現を目指す取組を推進することとした。
(2) 国内の動向
国連が、「人権教育のための国連10年」を決議したことを受けて、我が国では、平成7(1995)年に、内閣総理大臣を本部長とする「人権教育のための国連10年推進本部」を内閣に設置し、平成9(1997)年に「『人権教育のための国連10年』に関する国内行動計画」(以下「国内行動計画」という。)を策定しました。この国内行動計画では、人権の概念及び価値が広く理解され、人権という普遍的文化の構築を目指して、学校をはじめ地域社会や企業などのあらゆる場を通じた人権教育を推進するとともに、女性、子ども、高齢者、障がいのある人、同和問題、アイヌの人々、外国人、HIV感染者等、刑を終えて出所した人などの重要課題に積極的に取り組むこととされました。
また、人権教育・啓発の在り方や人権侵害の被害者救済の在り方などについて検討していた人権擁護推進審議会が、平成11(1999)年に人権教育・啓発の基本的な事項について国に答申を行い、これを受けて、平成12(2000)年に「人権教育・啓発推進法」が施行されました。この法律には、国及び地方公共団体は、「人権教育及び人権啓発に関する施策を策定し、実施する責務を有すること」、及び「国は施策を総合的かつ計画的に推進するために、基本的な計画を策定しなければならないこと」が規定されています。これに基づき、国では、平成14(2002)年に「人権教育・啓発に関する基本計画」を策定し、様々な人権教育・啓発に関する施策の総合的・計画的な推進を行っています。平成23(2011)年には、同計画の各人権課題に「北朝鮮当局による拉致問題等」を加える見直しが行われています。
なお、女性や子ども、高齢者等の個別の人権課題に関しては、虐待防止や雇用の平等実現等に向けた法整備が行われており、特に平成28(2016)年には、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)」「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律(ヘイトスピーチ解消法)」「部落差別の解消の推進に関する法律(部落差別解消推進法)」のいわゆる人権三法が施行されました。
その後も、令和3(2021)年に「新型インフルエンザ等対策特別措置法」が改正され、新型コロナウイルス感染症による差別の防止について国や地方公共団体の責務規定が設けられたほか、令和5(2023)年には、子どもの基本的な人権を守ること等を目的とした「こども基本法」が4月に施行されるとともに、性的指向やジェンダーアイデンティティにかかわらず相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現を目的とした「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律(LGBT理解増進法)」が6月に施行されるなど、人権を尊重した社会実現に向けた取組が進められています。
(3) 本県の動向
本県においても、平成11(1999)年に「『人権教育のための国連10年』宮崎県行動計画」(以下「県行動計画」という。)を策定し、人権という普遍的文化の創造を目指し、一人ひとりが有している人権を尊重し、共に生きる社会の実現に向けて、様々な施策を実施してきました。
県行動計画の目標年次である平成16(2004)年を迎え、また、平成12(2000)年に施行された人権教育・啓発推進法第5条で地方公共団体の責務として、人権教育及び人権啓発に関する施策を策定し、実施することが規定されていることから、県行動計画を継承し、人権教育・啓発推進法の趣旨を踏まえたものとして、平成17(2005)年に「宮崎県人権教育・啓発推進方針」を策定、平成26(2014)年に改定し、総合的かつ効果的な人権教育・啓発の取組を行っているところです。
また、令和4(2022)年3月には、「宮崎県人権尊重の社会づくり条例」を施行し、全ての人の人権が尊重される社会の実現に向けて取り組んでいます。
第2章 人権施策の推進
この目指す将来像を実現するためには、その前提として、全ての人の人権が尊重される社会づくりが欠かせません。
そこで、宮崎県では、同和問題をはじめ、女性や子ども、高齢者、障がいのある人など、個別の人権課題に関する施策を展開するだけでなく、県行政のあらゆる分野において職員一人ひとりが人権尊重を基本として業務を推進するため、以下のとおり取り組みます。
(1) 職員の人権意識の向上
職員一人ひとりが人権行政の担い手であるとの認識を持ち、人権意識の向上を図るため、それぞれの職位に応じた人権研修を実施します。
また、社会の変化に伴い新たに生じる人権課題に対して適切に対応するため、適宜、研修内容の充実・見直しを行います。
(2) 人権に関する県民意識の的確な把握
県内の人権の状況について、毎年度、市町村と意見交換を実施するとともに、必要に応じて関係団体等から意見を聴取します。
また、人権問題に関する県民意識について現状を把握するとともに、人権問題に対する県民の関心を高めるため、人権に関する県民意識調査を定期的に実施します。
(1) あらゆる場を通じた人権教育・啓発
県民の一人ひとりが、家庭、学校、職場、地域社会などあらゆる場を通じた様々な人権問題に関する教育・啓発によって、人権尊重の理念について正しい理解を深め、それが日常生活の中で態度や行動として根付くことをめざして、より効果的な人権教育・啓発活動を総合的に推進します。
ア 家庭における人権教育・啓発
家庭は、すべての教育の出発点であり、家族とのふれあいを通じ、幼児期から豊かな情操や思いやり、生命を大切にする心、善悪の判断、生活習慣やマナーを身に付けるなど、人間形成の基礎を育む上で重要な役割を担っていますが、近年、少子化・核家族化といった家庭環境の変化などに伴い、子どもへの過保護や過干渉、放任といった現状が見られ、家庭における教育機能の低下が指摘されています。
また、家庭内においては、子どもへの虐待、高齢者への介護放棄、更には配偶者等によるドメスティック・バイオレンス(DV)[1]などの様々な人権問題が生じており、生活の基礎となる家庭でそのような問題を生じさせないための対策を講じていく必要があります。
このため、以下のような施策の推進を図ります。
- 大人自身が偏見をもたず差別をしないことなどを、日常生活を通じて自らの姿をもって子どもに示していくことが重要であることから、大人も子どもも共に人権感覚が身に付くような家庭教育に関する学習機会の充実に努めます。
- 子育てや家事、介護等についての不安や悩みに関する相談体制の充実等に努めます。
- 子育てや家事、介護等について、固定的な性別役割分担意識[2]にとらわれることなく、男女が共に協力し合える男女共同参画社会[3]の実現に向けた家庭づくりを図るため、啓発活動の充実に努めます。
- かけがえのない生命、身体そして家族を大切にする心や習慣を大人も子どもももてるよう、豊かな人間性を育む家庭教育の支援に努めます。
[1] ドメスティック・バイオレンス(DV):配偶者や恋人など親密な関係にある又はあった人からふるわれる暴力。身体的暴力だけでなく、精神的、性的、経済的暴力など、様々な形態がある。
[2] 固定的な性別役割分担意識:男女を問わず個人の能力等によって役割の分担を決めることが適当であるにもかかわらず、「男は仕事、女は家庭」「男性は主要な業務、女性は補助的業務」等のように、男性、女性という性別を理由として、役割を固定的に分ける考え方のこと。
[3] 男女共同参画社会:男女が、互いにその人権を尊重しつつ責任も分かち合い、性別にかかわりなく、その個性と能力を十分に発揮することができる社会。
イ 学校における人権教育
学校においては、幼稚園等、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校等の教育目的や目標の実現を目指した教育活動が展開される中で、幼児・児童・生徒・学生に、社会生活を営む上で必要な知識・技能、態度などを確実に身に付けさせるとともに、人権に関する知識や人権を尊重する意識・態度も身に付けさせていく必要があります。
このため、以下のような施策の推進を図ります。
- 子どもたちの人権尊重の精神を育成していくためには、まず子どもの人権を尊重することが大切です。このため、「児童の権利に関する条約」や「こども基本法」の趣旨を踏まえて、一人ひとりの子どもの人権を尊重した学校運営や教育活動に努め、子どもたちが豊かな人間関係の中で安心して楽しく学ぶことのできる環境の確保に努めます。
- 子どもたちが、人権問題について正しい理解を深めるとともに、人権尊重の意識を高めることができるように、人権教育に関する指導内容や方法を充実させます。
- 「いじめ防止対策推進法」(平成25(2013)年制定)に基づいて作成した「宮崎県いじめ防止基本方針」(平成26(2014)年2月策定)にのっとり、いじめは深刻な人権侵害であり、どの子どもにも、どの学校でも起こりうることを踏まえ、すべての児童生徒を対象としたいじめの未然防止の観点が重要であることから、「いじめは決して許されない」ことの理解や、自他の存在を認め、お互いの人格を尊重し合える態度の育成等のために、学校の教育活動全体を通じ、人権教育、道徳教育や特別活動、体験活動等の充実を図ります。
- 豊かな人間性や社会性を育むため、社会教育との連携を図りつつ、ボランティア活動など多様な体験活動や、高齢者、障がい者、外国人等との交流の機会などの充実に努めます。
- 高等教育については、大学等の主体的判断により、法学教育など様々な分野において人権教育に関する取組に一層の配慮がなされるように促していきます。特に教育、医療、福祉に関わる分野において人権に関する講座が開設されるように促していきます。
- 幼稚園等の幼児に対しては、人権を大切にする心を育てるため、家庭や地域の実情に応じた適切な教育や保育が実施されるように促していきます。
- 子どもたち一人ひとりに応じたきめ細やかな指導が一層可能となるよう、指導者の養成や研修の充実に努めます。
ウ 地域社会における人権教育・啓発
地域社会には、家庭や学校とともに、お互いの人権を尊重する意識や他者に対する思いやりの心を育む役割があります。人権教育の原点が家庭、学校とともに地域社会にあることを再認識し、家庭と学校、地域社会が連携して、各種学習機会や情報の提供、生涯学習の振興のために行われる各種施策を通じて、人権に関する学習の一層の充実を図っていくことが必要です。
その際、人権に関する学習においては、単に人権問題を知識として学ぶだけではなく、日常生活において人権上問題のある出来事に接した際に、人権への配慮がその態度や行動に現れるような、人権感覚の高揚を図る必要があります。
また、地域の実情に応じ、住民一人ひとりが自分自身の課題として人権尊重の理念について理解を深めるような啓発活動を実施することが必要です。
このため、以下のような施策の推進を図ります。
- 社会教育の視点から公民館等の社会教育施設を中心として、地域の実情に応じた人権に関する多様な学習機会の充実に努めます。
また、学校教育との連携を図りつつ、青少年の社会性や思いやりの心など豊かな人間性を育むための社会奉仕体験活動・自然体験活動などの多様な体験活動や高齢者、障がい者、外国人等との交流の機会の充実に努めます。
- 高齢者の学習機会の体系的整備をはじめとして、生涯にわたって、いつでも、どこでも自由に人権に関する意識を高める教育が受けられるような学習機会の整備、充実に努めます。
- 学習意欲を高めるような参加体験型の学習プログラムの活用を図るとともに、身近な課題を取り上げたり、様々な人とふれあう体験を通して自然に人権感覚が身に付くような活動に取り組んだり、学習意欲を高める手法を創意工夫するなど指導方法に関する研究に取り組みます。
また、人権問題について正しい理解を深めるための学習資料の提供に努めます。
- 地域社会における啓発活動は、地域に密着したきめ細かい多様な事業が展開される必要があることから、法務局、県、市町村が連携を図り、また、NPO[1]等の協力を得ながら、啓発イベントの開催、資料の作成・配布などを行うことにより、県民が人権尊重の重要性を認識するとともに、それが日常生活の中で態度面、行動面等において根付くよう効果的な事業の展開を図ります。
- PTAをはじめとする社会教育関係団体、民生委員・児童委員、消防団等の各種団体は、地域社会を基盤として活動を続けていることから、地域社会における人権教育・啓発を推進する上で重要であり、構成員等の連帯や団体相互の交流を通じて人権意識の高揚を図るよう支援します。
- 地域社会において人権教育・啓発を先頭に立って推進していく指導者の養成、及びその資質の向上を図り、地域社会における教育指導体制の充実、さらには、NPO等との協働に努めます。
[1] NPO(Non Profit Organization):民間の非営利活動団体のことで、営利を目的とせず、自主的、自発的に公益的な活動を行う組織や団体をいう。
エ 企業等における人権教育・啓発
企業等では、男女間等の不公正な採用や賃金・昇進、職場におけるセクシュアル・ハラスメント[1]やパワー・ハラスメント[2]などの人権問題を解決することが重要な課題となっています。
また、今日では、企業等も社会を構成する一員であるとする「企業市民」という考えが定着し、その社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility)が重要視され、企業等が提供する商品やサービスの安全性への十分な配慮など、職場の中で働く人々の人権への配慮のみならず、顧客・消費者、取引先等の人権や地域社会に配慮することも求められています。
このことから、企業等には、人権問題についての従業員研修の積極的な実施及び地域における人権啓発活動や各種イベント等への積極的な参加・協力など、人権意識のさらなる高揚のための取組が期待されています。
このため、以下のような施策の推進を図ります。
- 企業等が従業員を採用するに当たっては、採用方針・採用計画の決定-募集-選考-採否通知等の一連の過程において、一貫して人権が尊重され、公正に行われるよう、労働局と連携しながら、その普及・啓発に努めます。
- 企業等内で取り組まれる人権教育・啓発活動に対しては、資料や教材の提供、研修講師の派遣・斡旋を行うなど、その取組を支援します。
- 県等が啓発事業として開催する講演会等への積極的な参加を促進するため、企業等への講演会等の開催の情報提供に努めます。
[1] セクシュアル・ハラスメント:性的嫌がらせ。相手の意に反した性的な性質の言動で、当該者の生活環境を害して不快な思いをさせること。身体への不必要な接触、性的関係の強要、性的な噂の流布、衆目に触れる場所へのわいせつな写真の掲示など、様々な態様のものが含まれる。
[2] パワー・ハラスメント:職場において、職務上の地位や人間関係等の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為。
(2) 特定職業従事者等に対する人権教育・啓発
人権教育・啓発の推進に当たっては、以下に掲げるような人権と関わりの深い特定の職業への従事者に対する人権教育・啓発を強化し、その人権意識の高揚を特に図る必要があります。
このため、それぞれの職業に応じた次のような施策の推進を図ります。
ア 公務員
人権に配慮した行政を推進するためには、すべての公務員が、人権問題を正しく理解し、豊かな人権感覚を身に付けることにより、人権尊重の視点に立って職務を遂行することが求められています。
このため、人権意識の高揚を図るための研修等の内容や手法を充実させるとともに、人権問題に関する研修会等への職員の参加に努めます。
イ 教職員等
教職員等は、学校や幼稚園等における教育活動・保育活動を通じて、すべての幼児・児童・生徒・学生に豊かな人権意識を育むため、自らの人権意識の高揚に努めるとともに、人権教育の推進者として必要な知識・技術・態度を習得することが求められています。
このため、人権教育に関する研修において、人権問題についての正しい理解を深めるとともに、参加体験型学習(ワークショップ)の方法を取り入れるなど、研修内容の一層の充実を図り、教職員等自らの人権意識を高めるとともに、将来へのよりよい生き方につながる教育活動や保育活動の工夫改善に生かすことができる資料等の作成に努めます。
ウ 医療関係者
医師、歯科医師、薬剤師、看護師、理学療法士、作業療法士、精神保健福祉士等の医療関係者は、医療現場における患者の人権の重要性を認識し、インフォームド・コンセント[1]の徹底や適切な患者の処遇など人権に配慮した行動がとれるよう人権意識の一層の高揚が求められています。
このため、関係機関・団体に対し、これら関係者の人権意識の高揚を図るための研修等の充実を要請します。
[1] インフォームド・コンセント:患者が自身の状態や医療行為の内容について医師等から十分な説明を受け、納得のうえで治療を選択すること。
エ 福祉関係者
民生委員・児童委員、社会福祉施設職員、ホームヘルパー等の福祉関係者は、高齢者や障がい者をはじめ、様々な人々の生活相談や介護などに携わっており、その職務の遂行に当たっては、個人の人権尊重や秘密保持など人権に配慮した行動が求められています。
このため、福祉関係者の資質向上を目的に行われている社会福祉研修センター事業等を通して、これら関係者の人権意識の高揚が図られるよう努めます。
オ 消防関係者
消防関係者は、火災をはじめとする各種災害から住民の身体・生命・財産を守ることを職務としており、人権に対する正しい理解と認識をもつ必要があります。
このため、県消防学校における人権意識の高揚を図るための研修等の充実を図るとともに、各市町村に対しても、その充実に努めるよう要請します。
カ 警察職員
警察職員は、公共の安全と秩序の維持という責務を遂行するに当たり、個人の権利や自由と密接な関わりをもつことから、人権に対する正しい知識をもつ必要があります。
このため、職務倫理教養を推進するとともに、警察学校における人権尊重に関する教育や、警察署等の職場における人権に配慮した適切な対応についての教養・研修等の充実を図ります。
キ マスメディア関係者
新聞、テレビ、ラジオなどのマスメディアは、社会の情報の大部分を提供しており、人々の価値判断や意識形成に大きな影響力を有するとともに、一方では、個人の名誉やプライバシーの侵害など人権侵害の危険性も有しています。
このため、マスメディア関連の企業・団体に対して、正確な情報を県民に提供するという公共的使命を踏まえながら、人権尊重の視点に立った取材及び紙面や番組の編集を行うように、社員等関係者の研修等をより一層充実するための取組を要請します。
ク 相談員
人権に関する相談業務に携わる人は、相談者の人権尊重や秘密の保持などはもちろん、二次被害を起こさないよう、相談者に接する際には十分な配慮を行う必要があります。
このため、相談業務に携わる人に対して、人権に配慮した適切な対応が行われるように、教育・啓発の推進に努めます。
ケ その他
自治会長、公民館長、地域のスポーツ少年団関係者など地域住民と関わりの深い人々への人権教育・啓発については、各市町村に対し、その推進に努めるよう要請します。
また、議会関係者等についても、議会等において人権教育・啓発の取組が行われるように、情報の提供や講師の紹介等に努めます。
(3) 人権教育・啓発を推進するための環境整備
人権教育・啓発を効果的に推進し、県民一人ひとりが人権の重要性を知識として身に付けるだけでなく、身近な問題としてとらえ、日常生活の中で人権に配慮した行動や態度に結びつくよう、以下のとおり取り組みます。
ア 人材の育成と活用
地域や企業、団体等の身近なところで人権教育・啓発を行うことのできる指導者の養成に努めるとともに、体系的な研修を企画できる、より専門的な指導者の養成に努めます。
また、新たな人権課題や効果的な研修方法についての知識習得を促すなど、指導者としての活用と資質向上を図ります。
さらに、人権尊重の取組を積極的・継続的に実践する個人・団体について、その取組を表彰・広報することなどにより、人権尊重思想の普及高揚を図ります。
イ 教材や資料、プログラム等の整備・充実・活用
人権教育・啓発において、対象者の発達段階や知識、習熟度等に加え、時の経過とともに変遷する人権を取りまく情勢等も考慮し、基礎的なものから専門的なものまで体系的な学習ができるよう、教材・資料等を開発するとともに、その充実に努めます。
また、学習者が主体的に参加し、学習者相互の交流、意見の交換など様々な体験を通じて学び合うことができるようなプログラムの研究開発に努めます。
さらに、人権教育・啓発を行う際は、対象者の属性やニーズ、教育・研修等のレベルに応じた多様な内容及び手法の導入を図るとともに、広く県民を対象とした啓発を行う際には、様々なイベントと連携するなど創意工夫を凝らしながら積極的に推進していきます。
ウ 広報の充実
人権教育・啓発の推進における広報媒体として、テレビ、ラジオ、新聞などのマスメディアが果たす役割は依然として大きく、県民に対し人権尊重の重要性を幅広く伝えるためには、マスメディアの積極的な活用が重要です。
一方で、インターネット環境の普及に伴い、いつでもどこでもホームページやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)[1]にアクセスできるようになるなど、情報収集・発信の方法が多様化していることから、これらの様々な媒体の特性、啓発内容や主な対象等を踏まえた効果的・効率的な取組を推進します。
[1]SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス):登録された利用者同士がWeb上で交流できる会員制交流サイトのこと。LINEやInstagram、X(旧Twitter)など。
エ ネットワークの構築
人権教育・啓発を効果的に推進するため、国、県、市町村、民間団体等の人権教育・啓発の実施主体の体制の充実・強化を図ります。
特に、人権啓発活動を総合的に行う拠点である宮崎県人権啓発センターを中心に、県民運動の推進母体である宮崎県人権啓発推進協議会をはじめとする民間団体等との連携・協働を図るとともに人権教育・啓発に関するノウハウを活用し、資料ライブラリーの活用、人権啓発・研修のリーダーとなる人材の育成の講座や研修事業、研修講師・指導者に関する情報の収集・提供、人権教育・啓発に関する資料の作成など、同センターが実施している事業の充実と周知を図ります。
人権問題に関する相談窓口としては、国(法務省)が常設及び特設の人権相談所を開設しているほか、各市町村に人権擁護委員[1]を配置し、その対応に当たっています。また、県及びNPO等においても、宮崎県人権啓発センターをはじめ、女性、子ども等各人権問題に応じた相談窓口を設置しています。
しかしながら、人権に関する相談では、女性や子ども、高齢者といった1つの人権課題だけでなく、「女性×高齢者」「障がい者×LGBT」など、複数の人権課題が複雑に絡み合っている事例も少なくありません。このような、複雑・多様化した相談に対し、情報提供や適切な助言を行うためには、相談員等の資質向上に加え、国、市町村、NPOなど様々な機関との連携が重要になります。
また、平成28(2016)年に施行された部落差別解消推進法等のいわゆる人権三法では、地方公共団体の責務として、国との適切な役割分担や地域の実情に応じ、差別に関する相談に的確に応じる体制の充実を図るよう努めることとされるなど、人権に関する相談体制の充実・強化が求められています。
さらに、令和4(2022)年に県が実施した「人権に関する県民意識調査」では、自分の人権が侵害されたと思ったことがある方を対象に「人権侵害を受けた時どのようにしたか」との問いに対し、「黙って我慢した」との回答が約7割に達するとともに、県や市町村の相談窓口に相談した人の割合が3.1%から2.5%に減少するなど、相談窓口を利用する人が依然として少数にとどまっていることから、その周知を図る必要があります。
このような状況を踏まえ、人権に関する相談体制の充実・連携や相談窓口の周知を図るため、以下のような取組を推進します。
[1] 人権擁護委員:人権擁護委員法に基づき、法務大臣が委嘱する民間ボランティアの方々。人権相談を受けたり人権の考えを広めたりする活動を行っている。
(1) 人権問題に関する相談体制の充実・連携
人権問題に関する相談員の資質向上を図るため、人権相談に関する研修を実施するとともに、研修方法・内容を工夫します。
複雑・多様化する人権相談に的確に対応するため、宮崎県人権啓発センターを中心に、それぞれの人権問題に応じた相談窓口の業務について相互理解を図ります。
誰もが安心して相談できるように、プライバシーの保護を徹底するとともに、相談場所や方法を配慮します。
(2) 相談窓口の周知
第3章 分野別施策の推進
(1) これまでの取組
国際社会の取組
年 |
取組等 |
昭和54(1979)年 |
「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(女子差別撤廃条約)」の採択 |
平成7(1995)年 |
「女性の権利は人権である」とうたった「北京宣言」の採択 |
平成27(2015)年 |
「持続可能な開発目標(SDGs)」(国連サミット採択)のひとつにジェンダー平等を設定 |
令和元(2019)年 |
「仕事の世界における暴力及びハラスメントの撤廃に関する条約」の採択 |
国の取組
年 |
取組等 |
昭和61(1986)年 |
「男女雇用機会均等法」施行 |
平成11(1999)年 |
「男女共同参画社会基本法」制定 |
平成12(2000)年 |
「男女共同参画基本計画」策定 ※平成17(2005)年、平成22(2010)年、平成27(2015)年に改定 「ストーカー行為等の規制等に関する法律」施行 |
平成13(2001)年 |
「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」施行 ※平成25(2013)年改正 |
平成27(2015)年 |
「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」制定 ※令和元(2019)年、令和4(2022)年に一部改正 |
平成30(2018)年 |
「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律」施行 ※令和3(2021)年に一部改正 |
令和2(2020)年 |
「第5次男女共同参画基本計画」策定 |
令和4(2022)年 |
「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」施行 「AV出演被害防止・救済法」施行 |
年 |
取組等 |
平成13(2001)年 |
男女共同参画社会づくりの推進拠点となる「宮崎県男女共同参画センター」の開設 |
平成14(2002)年 |
「みやざき男女共同参画プラン」策定 ※平成24(2012)年、平成29(2017)年に改定 |
平成15(2003)年 |
「宮崎県男女共同参画推進条例」施行 |
平成18(2006)年 |
「DV対策宮崎県基本計画」策定 ※平成21(2009)年、平成26(2014)年に改定 |
平成27(2015)年 |
「みやざき女性の活躍推進会議」の設立 |
平成28(2016)年 |
性暴力被害者等の総合的な支援を行う性暴力被害者支援センター「さぽーとねっと宮崎」の開設 |
平成31(2019)年 |
「第4次DV対策宮崎県基本計画」策定 |
令和4(2022)年 |
「第4次みやざき男女共同参画プラン」策定 |
(2) 現状と課題
男女が、互いにその人権を尊重しつつ責任も分かち合い、性別に関わりなく、その個性と能力を十分に発揮することができる男女共同参画社会の実現は、少子高齢化の進展や社会経済情勢の急速な変化に対応していく上で、社会全体で取り組むべき最重要課題です。
国においては、平成11(1999)年6月に「男女共同参画社会基本法」が施行、平成12(2000)年12月に基本法に基づく国の計画として初めての男女共同参画基本計画が策定され、改定を重ねながら、様々な取組が進められてきました。
本県においても、この法律等の趣旨を踏まえ、平成14(2002)年3月に「みやざき男女共同参画プラン」を策定するとともに、平成15(2003)年3月には「宮崎県男女共同参画推進条例」を制定し、男女共同参画社会の実現に向けた様々な施策を総合的に推進してきたところです。
しかしながら、世界経済フォーラムが令和5(2023)年に公表したジェンダーギャップ指数では、日本は146か国中125位と、特に政治・経済分野での格差が大きく、その解消に向けた対策が求められています。
本県においても、政策・方針決定過程への女性の参画は十分とは言えず、女性への家事や育児などのアンペイドワーク(無報酬労働)の負担の偏重により、女性が就職を希望しながら実現できていない状況や、女性の就業者の約半数が非正規雇用であることから男女の賃金格差が生じている状況にあります。また、令和2(2020)年に実施した「男女共同参画社会づくりのための県民意識調査」においても、「社会全体で男女が平等になっていると感じる人の割合」は2割にも届いていません。
さらに女性は、配偶者等からの暴力(DV)や、性暴力・性犯罪の被害者になることが多く、被害も深刻であるとともに、近年、SNSなどインターネット上の新たなコミュニケーションツールの広がりに伴い、これを利用した性犯罪など、暴力をめぐる状況は一層多様化しています。
女性に対する暴力の背景には、固定的な性別役割分担意識や社会的地位、経済力の格差など、男女が置かれた状況の違いや根深い偏見等が存在しており、暴力の根絶を図ることは、男女共同参画社会を形成していく上で克服すべき重要な課題となっています。
(3) 施策の方向
女性と男性が互いに人権を尊重しあい、性別に関わりなく、その個性と能力を十分に発揮できる男女共同参画社会づくりを進めるため、「第4次みやざき男女共同参画プラン」に基づき、以下のような施策の推進を図ります。
ア あらゆる分野における女性の参画拡大
- 市町村や企業における女性活躍の取組を推進するため、更なる働きかけや支援を行うとともに、ポジティブ・アクション[1](積極的改善措置)の推進や「みやざき女性の活躍推進会議」の取組の充実を図ることなどにより、政策・方針決定過程への女性の参画拡大や経済分野における女性の活躍を進めます。
また、ロールモデル[2]となる女性の情報発信、講座や研修等の学習機会の充実により、政策・方針決定に参画する意欲と能力を高め、あらゆる分野に参画できるよう支援します。(全部局)
- 男女が、価値観やライフスタイル等に応じ、多様かつ柔軟な働き方を選択できるよう、雇用の分野における男女の均等な機会と待遇の確保を推進するとともに、就業の継続や起業あるいは一旦離職しても再就職できる環境整備や、就業意欲と能力を十分に発揮できるための支援を行うことにより、就業環境の整備に取り組みます。(総合政策部、福祉保健部、商工観光労働部)
- 男女が共に働きやすく、暮らしやすい社会を実現するため、行政、企業、団体、労働者などが連携して長時間労働の是正等働き方を見直し、子育て・介護支援策の充実等に取り組むことにより、仕事と生活の調和の実現に向けた取組を推進します。(総合政策部、総務部、福祉保健部、商工観光労働部、教育委員会)
- 地域活動や環境分野における男女共同参画を推進するとともに、農山漁村においては、女性の経営上の位置付けの明確化に向けた取組を推進するほか、特産品の加工・販売やネットワークづくりを行う女性グループの支援等を行い、農山漁村における男女共同参画を推進します。(総合政策部、環境森林部、商工観光労働部、農政水産部、教育委員会)
[1] ポジティブ・アクション:様々な分野において、活動に参画する機会の男女間の格差を改善するため、必要な範囲内において、男女のいずれか一方に対し、活動に参画する機会を積極的に提供するものであり、個々の状況に応じて実施していくもの。例えば、国の審議会等委員への女性の登用のための目標の設定や、女性国家公務員の採用・登用の促進等が実施されている。
男女共同参画社会基本法では、積極的改善措置は国の責務として規定され、また、国に準じた施策として地方公共団体の責務にも含まれている。
[2] ロールモデル:将来像を描いたり、自分のキャリア形成を考える際に参考とする役割モデル。
イ 男女共同参画社会の実現に向けた基盤の整備
- 男女共同参画に関する認識を深めていけるよう、分かりやすい広報・啓発や情報提供などによる意識改革に取り組みます。(全部局)
- 子どもたちが、男女が協力して家庭生活を築くことや社会へ参画することの重要性について理解を深め、固定的性別役割分担意識にとらわれることなく将来を見通した自己形成ができるよう環境整備に取り組み、子どもの頃からの男女共同参画の理解の促進を図ります。また、あらゆる世代の人々が生涯にわたって男女共同参画の視点を学んだり、社会参画の意識を高めることができるよう、講座の開催や情報提供等による学習機会の充実を図ります。(総合政策部、福祉保健部、農政水産部、教育委員会、警察本部)
ウ 一人ひとりの人権が尊重される安全・安心な暮らしの実現
- 配偶者等からの暴力(DV)、性犯罪、売買春、人身取引、ストーカー行為[1]、セクシュアル・ハラスメントなど、女性に対するあらゆる暴力の予防と根絶に向けた広報・啓発活動の推進や、DV被害者への各種相談窓口における相談機能の更なる充実、性暴力被害者支援センター「さぽーとねっと宮崎」における総合的な支援等、被害者の保護、自立支援に向けた対策の充実を進めます。(総合政策部、総務部、福祉保健部、商工観光労働部、県土整備部、教育委員会、警察本部)
- 思春期の健康教育の推進や、児童生徒が性に関して正しく理解するとともに、自己や他者の命を大切にし、適切な意思決定や行動選択ができるように性に関する指導を医療機関等と連携しながら推進するなど、国際的に重要視されている「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利)[2]」の視点に配慮しつつ、男女が互いを尊重し、性差を理解し合って健やかに暮らすことができるよう、生涯を通じた健康支援に総合的に取り組みます。(福祉保健部、教育委員会)
- 男女共同参画の視点に立ち、様々な困難を抱えた女性等が安心して暮らせる環境の整備を進めます。(総合政策部、福祉保健部、商工観光労働部、県土整備部)
- 県民、事業者、自主防災組織及び行政が、それぞれの立場で自助、共助及び公助を実践し、防災に関する政策・方針決定過程及び防災の現場における女性の参画を拡大するなど、男女共同参画の視点を取り入れた防災体制の確立を図ります。(総合政策部、総務部)
[1] ストーカー行為:特定の者に対し、一方的に好意の感情や関心を抱き、執念深くつきまとい、相手に迷惑や攻撃、被害を与える行為を繰り返し行うこと。
[2] リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利):リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖の健康)とは、平成6(1994)年の国際人口・開発会議の「行動計画」及び平成7(1995)年の第4回世界女性会議の「北京宣言及び行動綱領」において、「人間の生殖システム、その機能と(活動)過程のすべての側面において、単に疾病、障がいがないというばかりでなく、身体的、精神的、社会的に完全に良好な状態にあることを指す」とされている。
また、リプロダクティブ・ライツ(性と生殖に関する権利)は、「すべてのカップルと個人が自分たちの子どもの数、出産間隔、並びに出産する時期を責任を持って自由に決定でき、そのための情報と手段を得ることができるという基本的権利、並びに最高水準の性に関する健康及びリプロダクティブ・ヘルス(性と生殖の健康)を享受する権利」とされる。
なお、妊娠中絶については、「望まない妊娠の防止は常に最優先課題とし,妊娠中絶の必要性をなくすためにあらゆる努力がなされなければならない。」とされている。
(1) これまでの取組
年 |
取組等 |
平成元(1989)年 |
「児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)」採択 ※「児童に関するすべての措置をとるに当たり、児童の最善の利益が主として考慮されること」と明記(日本は平成6(1994)年に批准) |
国の取組
年 |
取組等 |
平成11(1999)年 |
「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」制定 |
平成12(2000)年 |
「児童虐待の防止等に関する法律」施行 ※平成19(2007)年改正 |
平成15(2003)年 |
「インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律」(出会い系サイト規制法)施行 |
平成21(2009)年 |
「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」施行 |
平成22(2010)年 |
「子ども・若者育成支援推進法」施行 |
平成24(2012)年 |
子ども・子育て関連3法(「子ども・子育て支援法」等」施行 |
平成25(2013)年 |
「いじめ防止対策推進法」施行 |
平成26(2014)年 |
「子どもの貧困対策の推進に関する法律」施行 |
令和5(2023)年 |
「こども基本法」施行 |
県の取組
年 |
取組等 |
昭和52(1977)年 |
「宮崎県における青少年の健全な育成に関する条例」制定 |
平成17(2005)年 |
「次世代育成支援宮崎県行動計画」策定 ※平成22(2010)年に新たな「次世代育成支援宮崎県行動計画」策定 |
平成26(2014)年 |
「宮崎県いじめ防止基本方針」策定 |
令和2(2020)年 |
「宮崎県社会的養育推進計画」策定 「第2期宮崎県子どもの貧困対策推進計画」策定 「第2期みやざき子ども・子育て応援プラン」策定 |
(2) 現状と課題
物質的に豊かになるとともに、近年のデジタル化の進展等により生活の利便性が向上する一方で、生活体験や自然とふれあう機会が減少したことから、子どもたちに生命や自然を大切にする心、我慢する心や物を大切にする心が育ちにくくなっています。
さらに、少子化、核家族化の進行や、都市化の進展などに伴う地域の人間関係の希薄化により、子育て中の家庭が孤立しがちになっています。このため、子育てについての不安や悩みなど精神的負担が増大するとともに、過保護や過干渉、放任という状況も表れており、子どもに対して、規範意識、社会性、共生の心を育てにくい環境となっています。
家庭の養育力の低下や地域の連帯感・人間関係の希薄化などにより、子どもや家庭をめぐる問題は多様化・複雑化しており、全国では虐待により幼い命が奪われるなどの深刻な事案が起こっています。
児童虐待相談対応件数は全国的に増加傾向にあり、本県の令和4年度の相談対応件数は、県民の児童虐待への関心が高まり、近隣住民等からの通告が増加したこと等もありますが、2,019件と過去最高となっています。
また、児童売春やインターネット上における児童ポルノ、露骨な性描写、暴力・残虐シーンなどの有害情報の氾濫、覚せい剤等薬物乱用、SNS等の利用を通じて犯罪に巻き込まれるなど憂慮すべき社会状況も見られます。
学校ではいじめや不登校、非行等の問題行動が依然として深刻な状況にあります。
加えて、家庭が貧困であるために、子どもの日常生活や教育等に影響が及ぶ「子どもの貧困」の問題や家族の介護やきょうだいの世話等を行っているヤングケアラーの問題があります。特に、ヤングケアラーは表面化しにくい問題です。
子どもの健やかな成長を促すためには、子どもの権利が擁護されることが重要です。子どもを取り巻く様々な場面において、引き続き子どもの権利が尊重されるよう、家庭、学校、地域社会が互いに連携を図りながら、それぞれの教育力を高め、その力を十分に発揮するとともに、子どもの人権の尊重及び保護に向けた取組を積極的に推進していくことが求められています。
(3) 施策の方向
県民一人ひとりの人権意識の高揚を図るためには、特に子どもの時期の対応が重要であり、子どもの人権意識や思いやりの心を育成するための教育・啓発を、就学前、小・中・高校等を通じ一貫した学校教育等の中で実施するとともに、家庭や地域においても一体となって推進されるようにするため、以下のような施策の推進を図ります。
ア 子どもの人権を尊重する啓発活動
子どもの健全な成長・発達のためには、子どもを保護の対象としてだけではなく権利の主体として位置付け、子どもにとって最善の利益を保障する観点から捉えるなど、「児童の権利に関する条約」や「こども基本法」の理念の具現化に努めることが重要です。
学校においては、生命や人権を尊重する心、正義感や公正さを重んじる心をもった子どもを育成するとともに、自己に対する自尊感情を高めた上で、他者の個性を理解し、違いを受け入れる能力を育成するなど共に生きる社会の実現を目指すように努めます。
家庭においては、思いやりの心、感謝の心をもった子どもが育成されるよう、また、家族が支え合い、互いに尊重されるべきであるとの観点に立って、安定した人間関係の下、子どもの権利が認められるよう啓発に努めます。(福祉保健部、教育委員会)
イ 子どものいじめ防止対策
いじめは、児童生徒の人権に関わる重要な問題であるとともに、どの子どもにもどの学校にも起こりうる問題であるということを踏まえ、いじめは人間として絶対に許されないとの認識のもとに、未然防止の観点から、学校の教育活動全体を通じ道徳教育や特別活動、体験活動等の充実に努めます。また、早期発見や早期解消を図るため、相談体制の整備・充実や教職員研修の充実、専門的知識をもった教員の育成、家庭や地域社会等への啓発に努めるとともに、開かれた学校の視点に立った、学校、家庭、地域社会及び関係機関等との連携を強化します。
また、「宮崎県いじめ防止基本方針」に基づき、児童生徒の尊厳を保持するため、いじめの防止等のための対策を総合的かつ効果的に推進します。(総合政策部、福祉保健部、教育委員会)
ウ 子どもの健全育成の推進
子どもの健全育成のための環境整備に、家庭、学校、地域社会、関係機関・団体等が連携して取り組みます。特に、子どもに有害な情報や環境については、健やかに育成される権利を侵害するものとして、除去・防止のための取組に努めます。
また、ボランティア活動などの地域社会への参加、奉仕活動等や自然とのふれあい活動等を通して、体験と出会いの中で、思いやりや人権尊重の精神の涵養、社会の一員としての自覚を促すことにより、心豊かな子どもの育成に努めます。(福祉保健部、教育委員会)
エ 児童虐待防止・相談体制の充実
いろいろな悩みをもつ子育て中の家庭や子どもからの多様な相談に対応するため、宮崎県子ども・若者総合相談センター「わかば」をはじめ、児童相談所等の相談機関や各種の電話相談、民生委員・児童委員、主任児童委員、スクールカウンセラー[1]やスクールソーシャルワーカー[2]等各種相談体制及びその機能の充実に努めます。
また、子どもの人権を著しく侵害する児童虐待を許さない社会づくりを進め、発生予防から早期発見・早期対応の徹底のため、関係機関や地域と一体となって取り組むとともに、地域全体で児童虐待防止が図られるよう、関係機関の連携強化に努めます。さらに、家庭や地域社会等に対して、発生防止の啓発に努めます。(福祉保健部、教育委員会)
[1] スクールカウンセラー:様々な不安や悩みをもった児童生徒とその家族を心理の面からサポートする学校の専門スタッフ。
[2] スクールソーシャルワーカー:児童生徒が抱えている問題を解決するため、家庭や学校など児童生徒を取り巻く環境に、様々な方法で働きかける社会福祉士や精神保健福祉士の有資格者等。
オ 幼児期における人権感覚の育成
幼児期は、生涯にわたる人間形成の基礎が培われ、また周囲の環境から受ける影響が大きい時期であり、この時期に相手を思いやる心や豊かな人権感覚を身に付けることが大切です。
このため、幼稚園等において、一人ひとりの生活環境を十分把握しつつ、子どもの発達段階や個性に応じた適切な指導を行うとともに、家庭と地域が連携を図り、思いやりのある心の育成に努めます。(総合政策部、福祉保健部、教育委員会)
カ 子どもの貧困対策の推進
(1) これまでの取組
国の取組
年 |
取組等 |
平成7(1995)年 |
「高齢社会対策基本法」制定 |
平成8(1996)年 |
「高齢社会対策大綱」策定 |
平成12(2000)年 |
「介護保険法」施行 |
平成18(2006)年 |
「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」施行 |
平成24(2012)年 |
新「高齢社会対策大綱」策定 |
平成28(2016)年 |
「成年後見制度の利用の促進に関する法律」成立 |
平成30(2018)年 |
新「高齢社会対策大綱」策定 |
令和元(2019)年 |
「認知症施策推進大綱」策定 |
令和5(2023)年 |
「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」成立 |
県の取組
年 |
取組等 |
令和6(2024)年 |
「宮崎県高齢者保健福祉計画(第10次宮崎県高齢者保健福祉計画・第9期宮崎県介護保険事業支援計画・第2次宮崎県認知症施策推進計画)」策定 |
(2) 現状と課題
高齢者に対する身体的・精神的な虐待や、判断能力の不十分な高齢者に対する振り込め詐欺等の特殊詐欺や悪質商法などによる財産侵害をはじめとする人権侵害が社会問題となっています。
こうした状況を踏まえ、高齢者が住み慣れた地域や家庭で人間としての尊厳を保ちながら、安心して生活できるよう、高齢者個人の状況や多様なニーズに対応した保健・福祉サービスの提供をはじめ、社会参加の促進や相談体制の強化など、地域社会全体で高齢者の人権に配慮し、高齢者やその家族を支援していく体制づくりや高齢者の権利を擁護する仕組みの普及・充実が重要な課題となっています。
そして、県民すべてが健康で生きがいをもって過ごすことのできる地域社会を築くためにも、高齢者に対する尊敬や感謝の心を育て、ともに高齢社会を支え合う県民意識の醸成を図っていく必要があります。
(3) 施策の方向
高齢者の人権に配慮し、高齢者が安心して自立した生活を送れるよう支援するとともに、高齢者がそれぞれの知識と経験を生かし、社会を支える重要な一員として各種の社会的な活動に積極的に参加できるようにするため、以下のような施策の推進を図ります。
ア 福祉教育、啓発・広報活動の推進
- 学校教育においては、高齢化の進行を踏まえ、主に社会科や家庭科、道徳、特別活動、総合的な学習の時間に、福祉に関する教育としての高齢者の人権に関する教育を推進します。(教育委員会)
- 「老人の日・老人週間(9月15日~21日)」における行事を通じ、高齢者福祉についての県民の関心と理解の促進が図られるよう努めるとともに、高齢者の社会参加に対する理解と関心を深めるため、9月の「シニアパワー宮崎づくり月間」を中心に、啓発・広報活動を推進します。(福祉保健部)
イ 権利擁護の推進・相談体制の充実
高齢者が尊厳を保ちながら、安心して生活できるよう、医療や介護、福祉、人権擁護など幅広い分野との連携や関係職員等の資質向上を図り、高齢者虐待防止や相談等の対応に当たる市町村、国民健康保険団体連合会や地域包括支援センター[1]の取組の支援、相談体制の整備・充実、成年後見制度[2]の普及等に努めます。(福祉保健部)
[1] 地域包括支援センター:高齢者が住み慣れた地域で安心して尊厳あるその人らしい生活を継続することができるよう自助・互助・共助・公助の適切なコーディネートを行い、包括的および継続的に支援するため、地域包括ケア推進の中核的機関として市町村が設置。
地域の高齢者やその家族の方に対しては、各種保健福祉サービスや介護保険サービスに関する総合的な相談や、高齢者への虐待の防止などの権利擁護に関する相談・支援などを行うとともに必要な情報提供を行っている。
[2] 成年後見制度:認知症、知的障がい、精神障がい等の理由で、判断能力が十分でない方の権利を守るために、成年後見人等が本人に代わって財産を管理したり、福祉サービスの契約を締結したりすることによって、本人を支援する制度。
ウ 社会参加の促進
高齢者によるNPO等の立ち上げやNPO活動等への参加の促進、高齢者の学習機会の体系的な整備、学習機会に関する情報の提供やスポーツ・文化イベント等への支援等を行い、社会参加活動を促進します。(福祉保健部、教育委員会)
エ 就業の確保
- 高齢化が急速に進行している農山漁村において、高齢者が従事しやすい農林水産業の環境づくりを進めます。(環境森林部、農政水産部)
- 生涯現役社会の実現に向けて、シルバー人材センター等の支援を行うとともに、企業に対して定年の引き上げ、継続雇用の推進、定年制の廃止等の普及啓発に努めます。(商工観光労働部)
オ 安心できる暮らしの確保
- 高齢者に対する交通安全教育の実施や高齢者に配慮した交通環境の整備等により交通安全対策を進めます。(総合政策部、警察本部)
- 特殊詐欺や悪質商法などの被害を防止するため、関係機関が連携して、啓発を行うとともに消費生活相談体制の充実等を進めます。(総合政策部、警察本部)
- 地域住民やNPO、ボランティア等の住民参加による高齢者を地域で支える活動を支援するとともに、地域包括支援センター等の関係機関のネットワークの強化、連携を支援し、高齢者を地域で支える体制づくりを推進します。(福祉保健部)
- 高齢者等に配慮した住宅や様々な人が利用する施設のバリアフリー[1]化を推進し、「思いやりのある心づくり」の啓発を進めます。(福祉保健部)
[1] バリアフリー:高齢者・障がい者等が社会生活をしていく上で障壁(バリア)となるものを除去(フリー)すること。物理的、社会的、制度的、心理的な障壁、情報面での障壁など全ての障壁を除去するという考え方のこと。
カ 介護サービスの基盤整備・質的向上
- 高齢者が介護を要する状態になっても、できる限り住み慣れた地域や家庭で自立した生活が継続できるようにするため、居宅サービスや地域密着型サービスの充実等により地域包括ケアシステムを推進するとともに、介護する家族等の負担軽減を図ります。(福祉保健部)
- 介護サービスに関わる人材の養成や資質向上のための研修体制の整備を図るとともに、介護サービスに関する情報提供や関係機関との連携による円滑な苦情処理が行われるように努めます。(福祉保健部)
キ 介護予防・認知症高齢者支援策等の充実
- 市町村による自立支援、介護予防・重度化防止及び生活支援の取組のさらなる推進を図ります。(福祉保健部)
- 高齢者の心身機能の低下等に起因した疾病予防・介護予防のため、県内の健康課題や保健事業の実施状況を把握し、関係団体との連携を図り、広域連合と市町村による一体的実施の推進に取り組みます。(福祉保健部)
- 認知症[1]の早期発見の重要性を啓発するとともに、関係者と連携し、保健医療関係者等に対する認知症に関する研修を実施し、認知症の早期発見等を促進します。(福祉保健部)
[1] 認知症:いろいろな原因で脳の細胞が死んでしまったり、脳の司令塔の働きに不都合が生じ、様々な障がいが起こり、生活する上での支障が、およそ6ヶ月以上継続している状態(認知症サポーター養成講座テキストより)。また、高齢者だけでなく、65歳未満で発症する若年性認知症は、認識が不足し、診断前に症状が進行し社会生活が困難となるケースや、若年性認知症と診断されても、活用できる福祉や雇用の施策があまり知られていないことから、経済的な面も含めて本人とその家族の生活が困難となりやすいといわれている。
(1) これまでの取組
国際社会の取組
年 |
取組等 |
昭和50(1975)年 |
「障害者の権利に関する宣言」採択 |
昭和56(1981)年 |
「国際障害者年」 |
昭和57(1982)年 |
国連総会で「障害者に関する世界行動計画」の採択 |
平成18(2006)年 |
「障害者の権利に関する条約」(障害者権利条約)の採択 (日本は平成26(2014)年に批准) |
令和4(2022)年 |
国連の障害者権利委員会による第1回政府報告対面審査 |
国の取組
年 |
取組等 |
平成5(1993)年 |
「心身障害者対策基本法」を「障害者基本法」に改正 |
平成12(2000)年 |
「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」(交通バリアフリー法)の制定 |
平成14(2002)年 |
障がい者の資格・免許取得に関して、各種法令の欠格条項を見直す改正法の施行 |
平成17(2005)年 |
「発達障害者支援法」施行 |
平成18(2006)年 |
「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(バリアフリー法)施行 「障害者自立支援法」施行 |
平成23(2011)年 |
「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」(障害者虐待防止法)制定 |
平成25(2013)年 |
「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」(障害者総合支援法)施行 「国等による障害者就労施設等からの物品等の調達の推進等に関する法律」(障害者優先調達推進法)施行 「改正障害者雇用促進法」施行 |
平成28(2016)年 |
「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(障害者差別解消法)施行 |
令和6(2024)年 |
「改正障害者差別解消法」施行 ※事業者の合理的配慮の義務化等 |
県の取組
年 |
取組等 |
平成12(2000)年 |
「人にやさしい福祉のまちづくり条例」制定 |
平成28(2016)年 |
「障がいのある人もない人も共に暮らしやすい宮崎県づくり条例」(障がい者差別解消条例)施行 |
平成31(2019)年 |
「第4次宮崎県障がい者計画」策定 「手話等の普及及び利用促進に関する条例」施行 |
令和3(2021)年 |
「第6期宮崎県障がい福祉計画(第2期宮崎県障がい児福祉計画)」策定 |
令和6(2024)年 |
「障がい者差別解消条例」改正 「第5次宮崎県障がい者計画」改定 「第7期宮崎県障がい福祉計画(第3期宮崎県障がい児福祉計画)」改定 「宮崎県発達障がい者支援計画」改定 |
(2) 現状と課題
令和5(2023)年に県が実施した「障がい者アンケート調査」結果では、「これまでに障がいがあることで不当な扱いを受けたり、いやな思いをしたこと」が「ある」との回答が20.5%(前回調査:平成30(2018)年度33.4%)、県民の障がい者への理解と認識が「以前よりは深まったがまだ不十分」又は「深まっていない」との回答が合計37.8%(前回調査:平成30(2018)年度54.3%)となっており、今後も、障がいを理由とする差別の解消や県民への理解の促進の取組が必要となっています。
障がい者の就労に必要な環境・条件整備については、「障がい者を雇用する事業主の理解」の割合(39.7%)が最も高く、次に「職場仲間の障がい者への理解」(31.3%)などが続いています。
障害者雇用促進法の改正により、令和6(2024)年4月から民間企業の法定雇用率が2.3%から2.5%へ、令和8(2026)年7月からは2.5%から2.7%へ段階的に引き上げられる中、障がい者就労に関する普及のための啓発・広報等の一層の取組が必要となっています。
また、障がい者の養護者や障がい者福祉施設従事者等による虐待、就労の場での障がいを理由とした使用者からの不当な扱いなどの虐待が確認されており、虐待の未然の防止、早期発見・早期対応、虐待を受けた障がい者に対する保護や自立支援と併せて、虐待をした養護者に対する支援を行うなど、障がい者への権利擁護の取組が必要となっています。
障がいを理由とする差別解消を一層推進するため、令和6(2024)年4月1日から改正障害者差別解消法が施行され、事業者に対し、社会的障壁の除去の実施について、必要かつ合理的な配慮(合理的配慮[1])の提供が義務付けられることになります。
障がいの有無によって分け隔てられることなく、誰もが相互に人格と個性を尊重し、支え合う共生社会を実現することが求められています。
[1] 合理的配慮:障がいのある人と障がいのない人との平等を基礎として、すべての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することができるよう、一人ひとりの特徴や場面に応じて発生する障害や困難を取り除くための個別の変更や調整のこと。特定の場合において必要とされるものであり、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう。
(3) 施策の方向
「障害者差別解消法」に基づき、社会的障壁を除去していくために必要な合理的配慮を行っていくとともに、「障がいのあるなしによって分け隔てられることなく、地域でともに生きる社会づくり」を基本目標とする新たな「宮崎県障がい者計画」(令和6(2024)年改定)に基づき、障がい者が基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重され、施策の客体ではなく、必要な支援を受けながら、自らの決定に基づき、社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する主体として捉え、以下のような施策の推進を図ります。
ア 啓発・広報活動の推進
- 「障害者週間(毎年12月3日~9日)」、「精神保健福祉普及週間(毎年10月中・下旬から10月下旬・11月上旬の1週間)」、及び「人にやさしい福祉のまちづくり推進月間(毎年12月)」における啓発活動や、県障がい者スポーツ大会、芸術・文化祭など、NPO・ボランティア団体、障がい者団体などの幅広い層の協力を得ながら、障がい者との交流を通じて、障がいを理由とする差別の解消を含めた県民の理解を深める各種イベント等を実施します。(福祉保健部)
- 特に、外見からは分かりにくい発達障がい、高次脳機能障がい、難病の方の円滑な社会参加を促進するため、障がいの特性への理解や必要な配慮などについて、行政機関や障害福祉サービス事業所等の職員をはじめ、広く県民や企業等に向けた啓発・広報活動を推進します。(福祉保健部)
- 障がい者に対する理解を深め、思いやりの心を育むとともに、ボランティア等の福祉活動への参加を促進するため、学校教育において交流及び共同学習の取組を積極的に推進するとともに、教育関係者への研修を行います。(教育委員会)
イ 差別の解消、権利擁護の推進及び虐待の防止
- 障がい者及びその家族等からの障がいを理由とする差別に関する相談に的確に応じるとともに、障がいを理由とする差別に関する紛争の防止又は解決を図ることができるよう、宮崎県障害者社会参加推進センターに設置する相談窓口での相談、啓発・広報機能の強化・充実を図ります。(福祉保健部)
- 宮崎県障がい者権利擁護センターにおいて、市町村障がい者虐待防止センターや宮崎労働局等関係機関と連携を図りながら、障がい者の虐待防止や権利擁護に取り組みます。(福祉保健部)
- 障がい者の権利擁護について、広く県民に広報・啓発活動を行うとともに、障害福祉サービス事業所等における虐待防止委員会の設置や虐待防止責任者の設置を徹底し、障がい者虐待防止・権利擁護研修の実施を通じて事業所等の職員及び市町村職員の理解促進及び専門性を強化することで虐待の早期発見や防止に向けて取り組みます。(福祉保健部)
- 知的障がい又は精神障がいにより判断能力が不十分な方に対する日常生活自立支援事業、いわゆる「あんしんサポートセンター」や成年後見制度の利用促進のために、周知やニーズの把握に努めるとともに、市町村における地域での体制づくりに必要な調整・協力を行います。
ウ 在宅サービスの充実
地域で生活する障がい者が、障がいの特性や生活実態等に応じて各種サービスが利用できるよう、居宅介護などの訪問系サービスやショートステイ(短期入所)などのサービス提供体制の整備とサービスの質的・量的充実を図るとともに、市町村や関係機関等と連携しながら、地域間のサービスの平準化を図ります。(福祉保健部)
エ 教育環境の整備・社会参加の促進
インクルーシブ教育システム[1](障がい者を包容する教育制度)の推進を図るとともに、障がい者の自立や社会参加を促進するため、自立訓練、コミュニケーション手段の確保や外出のための移動支援等、地域の特性や利用者の状況に応じて社会参加促進のためのサービスの充実を図ります。(福祉保健部、教育委員会)
[1] インクルーシブ教育システム:人間の多様性の尊重等の強化、障がい者が精神的及び身体的な能力等を可能な最大限度まで発達させ、自由な社会に効果的に参加することを可能とするとの目的の下、障がいのある人と障がいのない人が共に学ぶ仕組みのこと。障がいのある人が教育制度一般から排除されないこと、自己の生活する地域において初等中等教育の機会が与えられること、個人に必要な「合理的配慮」が提供される等が必要とされている。平成18(2006)年に国連で採択された「障害者の権利に関する条約」において初めて提唱された。
オ スポーツ、文化芸術活動の振興
- 県障がい者スポーツ大会の開催及び全国障害者スポーツ大会への選手派遣等を通じて、障がい者を対象にスポーツの普及を図るとともに、スポーツ関係団体等が行う障がい者スポーツに関する取組を支援します。(福祉保健部)
- 障がい者の文化芸術活動への意欲の向上と県民の障がいに対する理解を深めるために、第20回全国障害者芸術・文化祭みやざき大会のレガシーを生かし、市町村や障がい者団体等と連携しながら、障がい者のニーズに応じた文化芸術活動の成果を発表する機会と展示する場の一層の充実を図ります。(総合政策部、福祉保健部)
カ 精神保健対策の推進
- 精神科病院の管理者・職員に対して、「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」の理念の周知に努めるとともに、精神医療審査会の審査と精神科病院への実地指導との効果的な連携を図ることにより、人権に配慮した適正な精神科医療の充実に努めます。(福祉保健部)
- 相談支援専門員等の相談支援に携わる人材の確保や障害福祉サービスの充実を図り、精神障がい者に対する周囲の人々の理解について、これまで以上の促進を図ります。(福祉保健部)
キ 雇用・就業への支援
- 毎年9月を「障がい者雇用支援月間」とし、宮崎労働局等と連携して、障がい者雇用優良事業所及び優秀勤労障がい者の表彰式と月間開始式を開催するとともに、テレビ、ラジオ、インターネットなどの媒体を活用して、広く県民に対する普及啓発を行います。(福祉保健部)
- 障がい者雇用に関する理解を深め、雇用促進・職場定着を図るため、企業の事業主等を対象としたセミナー開催など、普及啓発を引き続き実施します。(福祉保健部)
- 一般就労することが困難な障がい者に対し、就労継続支援事業や地域生活支援センター等を通して、就労の機会や生産活動の機会の提供を行うとともに、その内容の充実を図ります。(福祉保健部)
ク 人にやさしい福祉のまちづくりの推進
- 「人にやさしい福祉のまちづくり条例」及び「宮崎県人権尊重の社会づくり条例」に基づき、障がい者が基本的人権を享有するかけがえのない個人として、身近な地域でともに生活できるよう、障がいを理由とする差別の解消を含めた県民の理解、認識及び関心を深め、誰もが障がい者等に自然に手助けすることのできる「思いやりのある心づくり」を一層推進します。(福祉保健部)
- 「人にやさしい福祉のまちづくり条例」及び「バリアフリー法」の普及啓発を進めるとともに、引き続き条例の基準に適合する施設等の整備促進を図ります。(福祉保健部、県土整備部)
ケ NPO・ボランティア活動の推進
宮崎県社会福祉協議会において、学校や市町村社会福祉協議会と連携し、福祉教育研修会等を実施するなど、「地域共生社会」の実現に向けた地域福祉の新たな担い手育成を図ります。
また、NPO法人やボランティア団体、民間企業などが、民生委員・児童委員や市町村社会福祉協議会などの地域福祉関係者と協働して地域課題に対応する取組を推進します。(総合政策部、福祉保健部)(1) これまでの取組
国の取組
年 |
取組等 |
昭和40(1965)年 |
同和対策審議会答申 ※同和問題の解決は国の責務であり、国民的課題と明記 |
昭和44(1969)年 |
「同和対策事業特別措置法」施行(10年間の時限法(3年間延長)) ※生活環境の改善等の特別対策を実施 |
昭和57(1982)年 |
「地域改善対策特別措置法」施行(5年間の時限法) |
昭和62(1987)年 |
「地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律」(地対財特法)施行(5年間の時限法(5年間延長)) |
平成8(1996)年 |
地域改善対策協議会意見具申 ※地対財特法を5年間延長。また、特別対策は平成14(2002)年をもって終了し、以降は人権教育・啓発を中心とした、一般対策に移行することなど、今後の施策の方向性を提示 |
平成12(2000)年 |
「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」施行 ※人権教育・啓発は国及び地方公共団体の責務であると明記 |
平成14(2002)年 |
33年間の特別対策の終了 「人権教育・啓発に関する基本計画」策定(平成23(2011)年一部変更) |
平成28(2016)年 |
「部落差別の解消の推進に関する法律(部落差別解消推進法)」施行 |
県の取組
年 |
取組等 |
昭和52(1977)年 |
「宮崎県同和教育基本方針」策定 |
平成17(2005)年 |
「宮崎県人権教育・啓発推進方針」「宮崎県人権教育基本方針」策定 |
平成26(2014)年 |
「宮崎県人権教育・啓発推進方針」「宮崎県人権教育基本方針」改定 |
令和4(2022)年 |
「宮崎県人権尊重の社会づくり条例」施行 |
(2) 現状と課題
同和問題とは、日本社会の歴史的過程で形づくられた身分差別に基づく、我が国固有の人権問題であり、憲法が保障する基本的人権の侵害にかかる重大な社会問題です。
我が国では、同和問題の早期解決を図るため、昭和40(1965)年の同和対策審議会の答申を受けて、昭和44(1969)年に「同和対策事業特別措置法」(昭和44(1969)年7月~昭和57(1982)年3月)を制定後、数々の施策を推進してきました。
このような特別対策により生活環境の改善をはじめとする物的面での較差は大きく改善されたことから、平成14(2002)年3月31日をもって33年間にわたる特別対策は終了し、その後は一般対策の中で対応することとなりました。
本県においても、同和問題の早期解決に向けて同和対策事業を推進し、その結果、住宅、道路などの生活環境については相当程度改善されました。
また、平成12(2000)年の「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」の施行を受けて、平成17(2005)年に「宮崎県人権教育・啓発推進方針」を策定(平成26(2014)年改定)し、同和問題をはじめとする様々な人権問題の理解を深め、人権尊重社会の実現を目指した人権教育の推進や様々な啓発活動を積極的に展開するなど、同和問題の早期解決に向けた人権意識の高揚に努めています。
しかしながら、令和4(2022)年に県が実施した「人権に関する県民意識調査」では、「子どもが同和地区出身者と結婚したいと相談してきた場合にどうするか」との問いに対して、肯定的な回答(「子どもの意思を尊重し、親として支援・助力していく」等)が64.4%と、前回調査の60.3%より増加しているものの、否定的な回答(「親として反対するが、子どもの意思が強ければしかたない」等)が12.3%となっているなど、結婚や就職等の場面における差別意識の解消という点では今なお課題を残しています。
また、全国的には、今でも身元調査のための戸籍謄本等の不正取得事件等が発生しているほか、インターネット上で、同和問題に関する差別的な書き込みや、差別を助長・誘発する目的で同和地区の名称や所在地情報等を流布する行為など、情報化の進展に伴って部落差別に関する悪質な事象も発生しています。
このような状況を踏まえて、平成28(2016)年には「部落差別の解消の推進に関する法律」が施行され、国や地方公共団体の責務が改めて示されました。
同和問題に対する県民の正しい理解と認識が得られるよう、これまでの取組の経緯と成果を踏まえ、差別意識の解消に向けたより積極的な教育・啓発活動が求められています。
(3) 施策の方向
同和問題は重大な人権問題であり、その早期解決を図っていくため、「部落差別の解消の推進に関する法律」の趣旨や、これまでの経緯と成果を踏まえながら、以下のような施策の推進を図ります。
ア 啓発・教育の推進
- 県民一人ひとりが同和問題についての正しい理解と認識を深め、自らの課題として差別意識の解消に主体的かつ積極的に取り組むことを目指して、市町村や関係機関等とも連携しながら、県民への啓発を推進します。(総合政策部)
- 学校教育及び社会教育における人権教育を推進し、同和問題をはじめとする様々な人権問題についての正しい理解を深め、人権を相互に尊重し合い、共に生きる社会の実現を目指します。また、そのための意志と実践力をもった指導者の養成や研修の充実に努めます。(教育委員会)
- 本県における人権啓発活動の拠点としての機能を担う宮崎県人権啓発センターにおいて、啓発指導者の育成、企業・団体等が実施する研修会への講師の派遣、啓発研修教材の研究・作成を行うほか、県内の様々な機関、団体及び企業で組織する宮崎県人権啓発推進協議会を中心として、「人権啓発強調月間[1](8月)」や「人権週間[2](12月4日~10日)」における集中的な啓発活動等を展開します。(総合政策部)
[1] 人権啓発強調月間:宮崎県では、8月を「人権啓発強調月間」と定め、県民が同和問題をはじめとする様々な人権問題について考えるきっかけとなるような各種啓発活動を集中的に実施している。
[2] 人権週間:昭和23(1948)年12月10日に国連総会で「世界人権宣言」が採択されたことを記念して、毎年12月4日から12月10日までの1週間が「人権週間」として定められ、全国的に人権啓発活動が集中的に行われている。
イ 公正な採用選考の推進
差別のない明るい職場づくりのため、公正採用選考の徹底が図られるよう、労働局等と連携しながら周知・啓発に努めます。(商工観光労働部)
ウ えせ同和行為の根絶
えせ同和行為[1]は、県内では近年ほとんど確認されていませんが、同和地区の人々や同和問題の解決に真剣に取り組んでいる人たちに対するイメージを著しく損ね、ひいては同和問題に対する誤った認識を県民に植え付けるなど、これまで積み重ねてきた同和問題についての啓発効果を一挙に覆し、同和問題の解決を妨げる大きな要因となっています。
そのため、関係機関との連携を図るとともに、啓発資料(冊子・チラシ)や県ホームページによる周知・啓発など、引き続きえせ同和行為の排除に取り組んでいきます。(総合政策部)
[1] えせ同和行為:同和問題の解決に寄与しているかのように装って、企業・団体・個人・行政機関などに不当な利益や義務のないことを求める行為。
えせ同和行為の例としては、会社などに執拗に電話をかけてきたり直接訪問してきたりして、同和問題に対する認識不足を口実に、高額な図書や物品の購入を強要したり、特定の団体への寄付金や賛助金を強要したり、工事の発注や下請けへの参加を強要するといったものがある。
エ インターネット上での差別事象の解消に向けた取組
インターネット上での差別的な書き込み等の差別事象に対するモニタリングを実施し、法務局と連携して、適切な解決を図ります。
また、差別を助長又は誘発する情報を速やかに削除できるようにするなど、国に対して実効性のある対策を要望していきます。(総合政策部)
(1) これまでの取組
国際社会の取組
年 |
取組等 |
昭和23(1948)年 |
「世界人権宣言」採択 |
昭和40(1965)年 |
「人種差別撤廃条約」採択(日本は平成7(1995)年に加入) |
昭和41(1966)年 |
「国際人権規約」採択(昭和51(1976)年発効。日本は昭和54(1979)年に批准) |
国の取組
年 |
取組等 |
平成28(2016)年 |
「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律(ヘイトスピーチ解消法)」施行 |
平成29(2017)年 |
「外国人技能実習法」施行 |
平成30(2018)年 |
「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」策定 |
令和元(2019)年 |
在留資格「特定技能」創設 |
令和4(2022)年 |
「外国人との共生社会の実現に向けたロードマップ」策定 |
県の取組
年 |
取組等 |
平成13(2001)年 |
「宮崎県国際化推進基本指針」策定 |
平成17(2005)年 |
「宮崎県国際化推進プラン」策定 |
平成23(2011)年 |
「みやざき国際化推進プラン」策定 |
令和元(2019)年 |
「みやざきグローバルプラン」策定 みやざき外国人サポートセンターの開設 ※外国人住民等からの相談に対する多言語での対応のほか、生活や防災に関する情報提供等を実施 |
令和5(2023)年 |
「みやざきグローバルプラン(第2期)」策定 |
(2) 現状と課題
国際化の進展に伴い、日本に在留する外国人が増加し、その国籍や言語も多様化する傾向にあります。
このため、言語や習慣、文化等の違いにより相互理解が十分でないなどの理由で様々な問題が発生しています。中でも、特定の民族や国籍の人々を排斥する差別的言動であるヘイトスピーチが大きな問題となっており、こうした行為は人々に不安感や嫌悪感を与えるだけでなく、外国人への偏見や差別意識を生じさせることにもつながりかねないため、平成28(2016)年に「ヘイトスピーチ解消法」が施行されました。
本県における外国人数は、令和4(2022)年12月末現在8,309人で、国籍別にはベトナム(31.1%)が最も多く、次いでインドネシア(12.7%)、中国(12.3%)となっており、県内には91の国・地域の外国人が住んでいます。
また、令和4(2022)年10月末現在、県内で雇用されている外国人労働者数は5,616人(平成29(2017)年:3,490人)、外国人技能実習生数は3,298人(平成29(2017)年:2,342人)となっており、5年前からそれぞれ約1.5倍となっています。労働力の流動化、国際化により、今後県内においても、外国人労働者は増加していくことが予想されます。
なお、令和4(2022)年に県が実施した「人権に関する県民意識調査」でも、日本に居住する外国人に関して、人権上問題があることとして、「言葉や習慣、宗教が違うので地域社会に受け入れられにくい」(38.0%)と回答した方が最も多くなっています。
あらゆる差別を許さない意識を醸成していくために、一層の相互理解の機会や教育啓発活動に取り組んでいく必要があります。
本県では、多文化共生社会づくりや国際交流の促進等を図るため、令和元(2019)年に「みやざきグローバルプラン」を策定し、令和5(2023)年にこのプランを改定しました。
今後も、このプランを基本として、外国人の人権を擁護するために、児童・生徒・学生に対する人権教育の充実や県民に対する啓発活動を行い、子どもから大人まであらゆる年代の外国人が安心して生活できる環境づくりを推進することが求められています。
(3) 施策の方向
国際化の進展に伴い、外国との交流が増大している中、外国人の人権に配慮し行動ができるよう、「みやざきグローバルプラン」に基づき、以下のような施策の推進を図ります。
ア 多文化共生社会づくりの推進
外国人住民に対するコミュニケーションや生活支援、外国人住民との交流の機会、ユニバーサルデザイン[1]の推進など、国籍や民族などの異なる人々が、互いの文化的違いを認め合い、対等な関係を築きながら、地域社会の構成員として共に生きていくような多文化共生社会づくりを進めます。(総合政策部、福祉保健部、商工観光労働部、県土整備部、警察本部)
[1] ユニバーサルデザイン:年齢、性別、障がいの有無、言語など、人々が持つ様々な特性や違いを認め合い、できるだけすべての人が利用しやすい、すべての人に配慮した、環境、建築、施設、製品等のデザインをしていこうとする考え方。
イ 多様で身近な国際交流・国際協力の推進
アジアをはじめとした地域との相互交流や、留学生をはじめとした外国人住民との身近な国際交流を進めるとともに、関係団体と連携した国際協力を進めます。
また、県民の国際化に対する意識や関心を高め、国際理解の醸成を図るほか、県民主体の国際交流・協力活動を促進します。さらに、将来を担う子どもたちへの国際理解教育、外国語教育等を充実させることなどにより、国際感覚豊かな人づくりを進めます。(総合政策部、総務部、商工観光労働部、農政水産部、教育委員会)
ウ 外国人労働者の受入環境の整備
(1) これまでの取組
ア HIV感染者等
国際社会の取組
年 |
取組等 |
昭和63(1988)年 |
「世界エイズデー」(12月1日)制定 |
平成8(1996)年 |
「国連合同エイズ計画(UNAIDS)」発足 「HIV及びエイズと人権に関するガイドライン」採択 |
令和3(2021)年 |
「世界エイズ戦略2021~2026」策定 |
国の取組
年 |
取組等 |
平成元(1989)年 |
「後天性免疫不全症候群の予防に関する法律」 |
平成11(1999)年 |
「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」施行 「後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針」策定(平成18(2006)年、平成24(2012)年、平成30(2018)年に改定) |
イ ハンセン病患者・元患者等
国の取組
年 |
取組等 |
昭和6(1931)年 |
「癩予防法」制定 ※全患者を対象とする強制隔離政策の強化・拡大 |
平成8(1996)年 |
「らい予防法の廃止に関する法律」施行 ※隔離政策の終結 |
平成13(2001)年 |
熊本地裁において隔離政策について国の損害賠償責任を認める判決 「ハンセン病療養所入所者等に対する補償金の支給等に関する法律」施行 |
平成20(2008)年 |
「ハンセン病問題の解決の促進に関する法律」制定 ※ハンセン病患者であった人々への偏見・差別を解消し、地域社会で良好な生活を送ることができるようにする。 |
令和元(2019)年 |
熊本地裁においてハンセン病元患者家族への国の損害賠償責任を認める判決 「ハンセン病元患者家族に対する補償金の支給等に関する法律」施行 |
(2) 現状と課題
ア HIV感染者等
エイズ(後天性免疫不全症候群)は、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染し、免疫力が低下することによって発症するもので、HIV感染者とは、HIVの感染が確認されているものの、エイズを発症していない状態の人をいいます。
HIV感染者及びエイズ患者(以下「HIV感染者等」という。)は世界では約3,900万人おり(参考:UNAIDS「ファクトシート2023」)、我が国でも、令和4(2022)年に884人の新規HIV感染者等が報告されています(参考:厚生労働省「令和4(2022)年エイズ発生動向」)。
HIVの主な感染経路は性的接触、血液感染、母子感染ですが、性的接触以外の日常生活において感染する可能性はほとんどありません。また、治療の進歩によって、HIV感染の早期発見及び早期治療を適切に行うことで、エイズの発症を予防し、他人への感染リスクも大きく低下させることができるようになりました。
しかしながら、正確な情報が十分には伝わっておらず、原因不明で有効な治療法がなく死に至る病であった時代の認識にとどまっている場合が少なくありません。そのことが、感染を心配する人たちを検査や治療から遠ざけ、偏見や差別を招く一因となっています。
今後とも、エイズについての正しい知識の普及・啓発を図るとともに、本人の人権を尊重し、偏見や差別意識を解消するための啓発活動など、一人ひとりが安心して医療を受けながら暮らすことのできる社会づくりの一層の推進が求められています。
イ ハンセン病患者・元患者等
ハンセン病は、らい菌による感染症ですが、らい菌に感染しただけでは発病する可能性は極めて低く、現在では、発病した場合であっても、治療方法が確立しています。
そのため、ハンセン病患者を隔離する必要は全くありませんでしたが、我が国においては、古くから施設入所を強制する隔離政策が採られてきました。このことにより、ハンセン病は恐ろしいというイメージが助長され、ハンセン病患者・元患者やその家族に対する偏見や差別につながりました。
この隔離政策は、平成8(1996)年に「らい予防法の廃止に関する法律」の施行により終結しました。
しかし、療養所入所者の多くは、強制隔離の期間が長期に及んだことや高齢化、社会の偏見や差別が未だに存在することなどにより、社会復帰が困難な状況にあります。
今後とも、ハンセン病についての正しい知識の普及・啓発を図るとともに、その本人や家族の人権を尊重し、偏見や差別意識を解消するための啓発活動など、一人ひとりが安心して医療を受けながら暮らすことのできる社会づくりの一層の推進が求められています。
ウ 感染症患者等
令和2年からの新型コロナウイルス感染症の国内流行により、新型コロナウイルス感染症の感染者や濃厚接触者、感染症に対応する医療・福祉従事者、さらにはその家族等に対して、様々な誹謗中傷や偏見、差別が発生したほか、県外との往来者や流通業など社会生活の維持に欠かせない職業に従事する人々に対しても、偏見や差別が広がりました。
令和4(2022)年に県が実施した「人権に関する県民意識調査」の結果においても、新型コロナウイルス感染症に関する人権問題として、「感染者やその家族」、「治療に当たる医療従事者等やその家族」、「集団感染が発生した医療機関・学校等」に対する誹謗中傷や差別的な取扱いを問題と考えている回答が上位にあげられています。
「新型インフルエンザ等対策特別措置法」の改正(令和3(2021)年2月施行)により、感染者やその家族、医療従事者等に対する差別的取扱いを防止するための規定が設けられました。
今後も新興感染症や再興感染症が流行した際には、未知のウイルスに対する不安や無理解等により、同様の差別的行為等が発生するおそれがあることから、感染者やその家族、医療従事者等の人権が尊重され、差別的な取扱いを受けることのないよう、誹謗中傷や偏見、差別を防止するため、正しい知識の普及啓発に取り組んでいく必要があります。
(3) 施策の方向
エイズ、ハンセン病、新興感染症等の感染症についての正しい知識の普及・啓発を図ることにより、その本人や家族が尊厳をもって周囲の人々と同じように暮らせる社会づくりとともに、その社会復帰のための体制づくりのため、以下のような施策の推進を図ります。
ア HIV感染者等
- ポスター、パンフレットの作成・配布やテレビ・ラジオを活用した啓発等のキャンペーンを通じて、エイズに関する正しい知識の普及・啓発に努めます。(福祉保健部)
- 保健所におけるエイズ等性感染症の匿名による相談・検査体制を推進します。(福祉保健部)
- HIV感染者等の病気や生活上の不安等、心のケアを支援するために、主治医の要請に基づき、カウンセラーの派遣を行います。(福祉保健部)
- 学校教育における、エイズ教育等を通じたHIV感染者等に関する正しい知識の普及に努めます。(教育委員会)
イ ハンセン病患者・元患者等
パネル展示などにより、ハンセン病に関する正しい知識の普及・啓発を図るとともに、療養所の本県出身入所者を対象とした里帰り事業や、中学生、高校生等を対象とした療養所訪問事業等の実施により、社会復帰に向けての関係機関との支援体制づくりに努めます。(福祉保健部)
ウ 感染症患者等
- パンフレット等の作成、キャンペーンや一般向け講習会の実施、各種健康教育等を通じ、関係機関と連携しながら、幅広い年齢層に対し正しい知識と中傷や偏見、差別の防止による人権尊重について普及啓発を行います。(総合政策部、福祉保健部)
- 保健所における各種の相談事業を通じ、感染症患者やその家族、医療関係者等の相談を受け、必要な助言や対策等を行います。(福祉保健部)
- 学校や職場を活用し、感染症等に関する啓発及び知識の普及を図ります。(福祉保健部)
(1) これまでの取組
国の取組
年 |
取組等 |
昭和56(1981)年 |
「犯罪被害者等給付金支給法」施行 ※現在、「犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律」に改題 |
平成12(2000)年 |
「犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律」制定 ※現在、「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律」に改題 |
平成16(2004)年 |
「犯罪被害者等基本法」制定 |
平成17(2005)年 |
「犯罪被害者等基本計画」策定 ※平成23(2011)年、平成28(2016)年に改定 |
令和3(2021)年 |
「第4次犯罪被害者等基本計画」策定 |
県の取組
年 |
取組等 |
平成8(1996)年 |
県警察本部が「宮崎県警察被害者対策要綱」を制定 ※平成23(2011)年に「宮崎県警察犯罪被害者等支援要綱」に改定 |
平成11(1999)年 |
県警察本部に「犯罪被害者対策室」を設置 ※現在、「犯罪被害者支援室」に改称 |
平成16(2004)年 |
社団法人宮崎犯罪被害者支援センターの設立 ※現在、「公益社団法人みやざき被害者支援センター」に改称 |
平成28(2016)年 |
性暴力被害者等の総合的な支援を行う性暴力被害者支援センター「さぽーとねっと宮崎」の開設 |
令和3(2021)年 |
「宮崎県犯罪被害者等支援条例」施行 |
令和4(2022)年 |
「宮崎県犯罪被害者等支援基本計画」策定 |
(2) 現状と課題
犯罪被害者とその家族又は遺族(以下、「犯罪被害者等」という。)は、突然、事件・事故に遭遇し、生命を奪われる(家族を失う)、身体を傷つけられる、財産を奪われるといった直接的な被害を受けるだけでなく、それに伴い生じる精神的な苦痛や再び犯罪の被害に遭うことへの不安、さらに、周囲の無理解や心ない言動、インターネットを通じて行われる誹謗中傷、報道機関による過剰な取材等による二次被害にも苦しみ、社会から孤立する状況も見られます。
特に、性犯罪被害者の場合は、被害に遭ったことを周囲に相談しづらかったり、また、相談する場合も自身の被害について繰り返し話さなければならないことで、更に精神的ダメージを受けたり、被害直後のみならず、相当な期間を経過しても様々な困難や苦しみに直面しています。
このような状況に置かれた犯罪被害者等に対して、個人の尊厳にふさわしい処遇が保障され、早期に被害から回復し、平穏な日常生活を取り戻すことができるよう、関係機関の連携の下、犯罪被害者等に寄り添い、途切れることのない、適切できめ細かな支援を行っていくとともに、県民一人ひとりが、犯罪被害者等の声に耳を傾け、その置かれている状況についての理解を深めるための啓発活動等を推進する必要があります。
(3) 施策の方向
関係機関・団体の連携と県民の理解と協力のもと、「宮崎県犯罪被害者等支援基本計画」に基づき、以下のような施策の推進を図ります。
ア 相談・支援体制の充実
- 県の総合的対応窓口[1]をはじめとする各種の相談窓口において、犯罪被害者等やその他犯罪等[2]により支援が必要と認められる方からの相談に応じるとともに、国、市町村、民間支援団体、その他関係機関と相互に連携、協力して、犯罪被害者等への支援を推進します。(総合政策部、総務部、福祉保健部、商工観光労働部、県土整備部、労働委員会、病院局、教育委員会)
- 相談等を受理する際は、可能な限り事前に被害者等が落ち着いて話ができるような環境を整え、被害者等の性別や年齢、希望に応じ、相応の捜査官が応対するよう努めます。
また、捜査過程における捜査官の言葉や態度が犯罪被害者等の心理状況に及ぼす影響は大きなものがあることから、過剰な負担や二次的被害が生じないよう、犯罪被害者等の心情に配慮した捜査に努めます。(警察本部)
- 犯罪によって受けた精神的な被害を回復・軽減するために、受けることのできる支援の内容や、刑事手続に関することなど、犯罪被害者等にとって早期に必要な情報や、捜査の状況、加害者の処分状況など、犯罪被害者等の支援に関係ある情報を提供できるよう、手引の作成・配布や被害者連絡制度等、各種施策の推進と充実に努めます。(警察本部)
- 犯罪被害者等の経済的負担を軽減するため、警察が整備している様々な制度が全国警察の水準を満たしているかを定期的に確認し、制度の見直しや充実を図ります。
また、殺人事件の遺族や身体に障がいを負わされた犯罪被害者等に対して国が給付金を支給する犯罪被害給付制度について広報を行うとともに、これを適切に運用し、犯罪被害者等の精神的・経済的被害の緩和を図るよう努めます。(警察本部)
- 警察本部及び各警察署において行っている警察安全相談、暴力相談、少年相談、性犯罪相談等の相談窓口について、今後もその受理体制の充実を図ります。また、犯罪により大きな精神的被害を受けた犯罪被害者等に対するカウンセリング体制について、関係機関・団体と連携を図りながら、その充実に努めます。(警察本部)
- 性暴力被害者の心身の負担を軽減するため、性暴力被害者支援センターを運営し、被害直後から総合的に支援することにより、その心身の回復を図るとともに、警察への届け出を促進し、被害の潜在化を防止します。(総合政策部)
[1] 総合的対応窓口:犯罪被害者等からの相談・問合せに対応して、関係部局や関係機関・団体に関する情報提供・橋渡しを行うなど、総合的な対応を行う窓口。平成31年4月に全ての地方公共団体に設置された。
[2] 犯罪等:犯罪及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす行為のこと。
イ 啓発・研修の推進
- 犯罪被害者等を支える環境づくりを進めるため、犯罪被害者週間(11月25日~12月1日)におけるイベント等を通じて、市町村及び関係機関・団体と連携して、犯罪被害者等支援の広報啓発活動を行います。
また、犯罪被害者等の人権問題に関する啓発を目的に、広く県民を対象とした講座等を開催します。(総合政策部、警察本部)
- 「公益社団法人みやざき被害者支援センター」との連携を図り、相談事業、直接支援事業、広報啓発活動等の充実を図るとともに、宮崎県犯罪被害者等支援連絡協議会、宮崎県弁護士会犯罪被害者支援委員会等に属する関係機関・団体との連携を強化し、犯罪被害者等のニーズに沿ったきめ細かな支援に努めます。(警察本部)
- 住民に最も身近な行政機関である市町村において犯罪被害者等に必要な支援を行えるよう、市町村職員等を対象とした研修等を開催し、犯罪被害者等支援に関する情報提供を行うとともに、二次被害や代理受傷[1]の防止を含む研修を実施し、各市町村に設置されている総合的対応窓口の充実を図ります。
また、当該研修会等には、県の関係課職員等も参加させ、県職員の資質向上に努めます。(総合政策部、警察本部)
[1] 代理受傷:犯罪被害者の支援者等が、被害者の状況を間近に見たり、つらい話を聞くことで、まるで自分自身が被害に遭ったように感じ、極めて強いストレスを受け、心身に変調等をきたすこと。
(1) これまでの取組
国の取組
年 |
取組等 |
平成14(2002)年 |
「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」(プロバイダ責任制限法)施行 ※プロバイダ等の保有する発信者の情報の開示請求が可能となった。 |
平成15(2003)年 |
「インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律」(出会い系サイト規制法)施行 「個人情報保護法」施行 |
平成21(2009)年 |
「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」施行 |
平成26(2014)年 |
「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律」(リベンジポルノ規制法)施行 |
令和4(2022)年 |
「刑法等の一部を改正する法律」施行 ※侮辱罪の法定刑引き上げ 「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律の一部を改正する法律」施行 ※新たな裁判手続(非訟手続)の創設、開示請求を行うことができる範囲の見直し |
(2) 現状と課題
インターネットは、スマートフォン、タブレット端末、パソコン等を使って、誰でも気軽に情報を受信・発信できる便利なメディアとして、私たちの生活に欠かせないものとなっています。
一方で、その匿名性や情報発信の容易さから、個人の名誉を侵害したり、本人の了承を得ずに住所や顔写真等のプライバシーを侵害する情報を掲載したり、他人を誹謗中傷する表現、特定の民族・国籍の人々や部落差別(同和問題)に関して差別を助長する表現等が、SNSやインターネット掲示板等に掲載されるなど、人権にかかわる様々な問題が発生しており、インターネット上の人権侵害の問題は、近年深刻化しています。
また、スマートフォンをはじめ様々なインターネット接続機器等の普及に伴い、子どものインターネットの利用時間は増加傾向にあり、SNS等の利用を通じたいじめや児童ポルノ等の犯罪被害、対人関係のトラブルなど、子どものインターネット利用による様々な問題が起こっています。
インターネット上に掲載された情報等は、一旦拡散してしまうと完全に削除することは非常に困難です。
令和4(2022)年に県が実施した「人権に関する県民意識調査」では、関心を持っている人権として、「インターネットによる人権問題」と回答した方は35.2%で、これは全体で3番目に高い数値となっており、インターネットによる人権問題への県民の関心は高いといえます。
また、インターネットにおいて、人権上問題があることとして、「他人を誹謗中傷する表現や差別を助長する表現など、人権を侵害する情報が掲載されている」(64.9%)、「プライバシーに関する情報や写真が無断で掲載されており、一旦拡散してしまうと削除が困難である」(53.8%)等との回答が多くなっています。
インターネットを利用した人権侵害を防止するため、インターネット利用者やプロバイダ[1]等が、個人の名誉をはじめとする人権に関する正しい理解を深めるための教育・啓発を推進することが求められています。
[1] プロバイダ:インターネットへの接続サービスを提供する事業者等。
(3) 施策の方向
インターネットを利用する一人ひとりが人権侵害を行わないように人権意識の高揚が重要であるため、以下のような施策の推進を図ります。
- インターネット利用者が情報モラル[1]を守り、個人の名誉やプライバシーを侵害する行為、他人を誹謗中傷する表現や差別的な書き込み等の人権を侵害するような情報をインターネット上に掲載しないよう、県民向けの人権講座の開催や企業・団体等が実施する研修会への講師の派遣、各種広報・啓発資料の配布等により、啓発を推進します。(総合政策部)
- 行政・保護者や事業者が一体となって、フィルタリングソフト[2]の導入等によるインターネットの適切な利用や、メディア・リテラシー[3]の向上に関する広報・啓発に努めます。(福祉保健部、教育委員会、警察本部)
- 近年、子どもたちの間でのインターネットを利用したいじめ等の人権侵害が大きな問題となっており、学校においては、情報に関する教科等で、情報の収集・発信における個人の責任や情報モラルについて理解させるための教育の充実に努めます。(教育委員会)
[1] 情報モラル:インターネットや携帯電話など情報通信の分野において、個人の人権やプライバシー等を保護するための倫理道徳。
[2] フィルタリングソフト:インターネット上のウェブサイト等を一定の基準に基づき選別し、青少年に有害な情報を閲覧できないようにするソフト。
[3] メディア・リテラシー:メディアの情報を主体的に読み解く能力、メディアにアクセスし活用する能力、メディアを通じコミュニケーションする能力の3つを構成要素とする複合的な能力のこと。
(1) これまでの取組
国の取組
年 |
取組等 |
平成16(2004)年 |
「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」施行 ※一定の要件を満たした場合に、戸籍上の性別の変更が可能となった。 |
平成27(2015)年 |
「性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細やかな対応の実施等について」の通知発出 |
令和2(2020)年 |
「労働施策総合推進法」改正 ※「パワーハラスメント防止のための指針」において、性的指向・性自認に関する侮辱的な言動や、性的指向・性自認等の機微な個人情報について当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露することをパワハラ該当例として明記 |
令和5(2023)年 |
「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」施行 |
(2) 現状と課題
人の性(セクシュアリティ)は、男性・女性の「生物学的性(生まれたときの身体の性別)」だけに分けられるものではなく、性のあり方は非常に複雑で多様なものです。
多様な性を表現する言葉としてLGBT[1]がありますが、近年は、LGBTに加え、「性的指向(Sexual Orientation)」と「性自認(Gender Identity)」の頭文字から「SOGI」という略称も用いられています。
「性的指向」とは、どのような性別の人を好きになるかを指す概念で、異性愛、同性愛、両性愛のほか、男性・女性どちらに対しても恋愛感情等を抱かないということもあります。
「性自認」とは、自分の性をどのように認識しているのかを指す概念で、生物学的性と性自認が一致している、生物学的性に違和感をもち別の性別で生きたい・生きている、男性・女性のいずれかとは明確に認識していない、決められない、分からないなどがあります。
その中で、同性愛、両性愛等の性的指向の方や、生物学的性と性自認が一致しない方等は、社会生活の中で、偏見の目にさらされたり、差別的な言動を受けたりする等、様々な人権に関わる問題に直面しています。また、カミングアウトされた性のあり方を本人の同意なく他人に伝えるアウティングが社会問題となっています。
なお、近年、お互いをパートナーとして認めることを宣誓した同性カップルであることを証明する「パートナーシップ宣誓制度」を導入する自治体が増えており、当事者の方が生きやすい社会を支援する動きが広がっています。
性のあり方は、個人の尊厳にかかわる重要な問題です。誰もが自分のセクシュアリティを尊重される、自分らしく生きられる社会をつくるためにも、多様な性について理解すること等が大切です。
[1]LGBT:女性の同性愛(Lesbian)、男性の同性愛(Gay)、両性愛(Bisexual)、生物学的性と性自認に違和感をもち、生物学的性と別の性別で生きたいと望む人、または生きている人(Transgender)の頭文字を取った総称。他に自分自身のセクシュアリティを決められない、分からない、または決めない人(Questioning)等を加えた「LGBTQ」や、これら以外にも様々なセクシュアリティがあるということを表す「LGBTQ+」等ということもある。
(3) 施策の方向
性的指向や性自認を理由とする差別や偏見を解消し、その人権を守るためには、学校、職場、地域社会などの周囲の人々が、多様な性の在り方について認識し、理解を深めていくことが重要であるため、以下のような施策の推進を図ります。
ア 教育・啓発の推進
多様な性を理解するための書籍やDVD、リーフレット等関係資料の整備等に努めるとともに、研修会、講演会等の開催や啓発資料の配付等を通じて、教育・啓発活動の推進を図ります。(総合政策部)
イ 相談体制の充実
相談体制の充実を図るとともに、性について悩んでいる児童生徒については、必要に応じて関係機関との連携に努めます。(総合政策部、教育委員会)
ウ 生きづらさの解消に向けた取組の推進
公文書における性別記載欄の見直しや性の多様性の理解にむけたハンドブックの作成・充実など、多様な性のあり方を尊重し、性的指向・性自認を理由とする生きづらさが解消されるよう取組を推進します。(総合政策部)
(1) これまでの取組
国の取組
年 |
取組等 |
平成19(2007)年 |
「更生保護法」制定 |
平成24(2012)年 |
「再犯防止に向けた総合対策」 |
平成28(2016)年 |
「再犯の防止等の推進に関する法律」施行 |
平成29(2017)年 |
「再犯防止推進計画」策定 |
令和5(2023)年 |
「第二次再犯防止推進計画」策定 |
県の取組
年 |
取組等 |
令和2(2020)年 |
「宮崎県再犯防止推進計画」策定 |
令和6(2024)年 |
「第二次宮崎県再犯防止推進計画」策定 |
(2) 現状と課題
刑を終えて出所した人に対しては、本人に真摯な更生の意欲がある場合であっても、県民の意識の中に根強い偏見や差別意識があることから、就職や住居の確保に際して大きな障害となるなど、社会復帰を目指す人たちにとって現実は極めて厳しい状況にあり、出所後の適切な支援を受けられないまま、地域社会で孤立し、再び罪を犯す人もいます。
刑を終えて出所した人に対しては、保護司、更生保護女性会、BBS会[1]等の民間更生保護ボランティアや、就労を支援する協力雇用主、更生保護法人等によって支援が行われているほか、法務省では、犯罪や非行の防止と、罪を犯した者たちの更生について理解を深め、それぞれの立場において力を合わせ、犯罪のない地域社会を築くため、7月を強調月間とした「社会を明るくする運動」に取り組んでいます。
刑を終えて出所した人が真に更生し、社会の一員として円滑な生活を営むことができるようにするためには、本人の強い更生意欲とともに、家族、職場、地域社会など周囲の人々の理解と協力が欠かせません。
そのため、刑を終えて出所した人に対する偏見や差別意識を解消し、その社会復帰に資するための啓発活動を積極的に推進する必要があります。
[1] BBS会:Big Brothers and Sistersの略で、非行や生きづらさを抱えた少年少女に寄り添い、同世代のいわば兄や姉のような立場で、ともに悩み、学び、楽しむボランティア活動を展開している団体。
(3) 施策の方向
- 刑を終えて出所した人について、その人権を守るために、偏見や差別をなくし、社会復帰に資するための啓発等を関係機関と連携・協力しながら行います。(総合政策部)
- 高齢又は障がいにより、福祉的な支援を必要とする刑務所等の出所予定者及び出所者等に対して、出所後直ちに福祉サービス等につなげるため、県の運営する「宮崎県地域生活定着支援センター」と保護観察所等が連携を図りながら、出所前から一貫した相談支援を行うことで、その社会復帰を支援し、再犯防止の推進を図ります。(福祉保健部)がいにより、福祉的な支援を必要とする刑務所等の出所予定者及び出所者等に対して、出所後直ちに福祉サービス等につなげるため、県の運営する「宮崎県地域生活定着支援センター」と保護観察所等が連携を図りながら、出所前から一貫した相談支援を行うことで、その社会復帰を支援し、再犯防止の推進を図ります。(福祉保健部)
(1) これまでの取組
国際社会の取組
年 |
取組等 |
平成17(2005)年 |
国連総会における「北朝鮮の人権状況に関する決議」(平成17年以降令和2年まで毎年採択) |
国の取組
年 |
取組等 |
平成15(2003)年 |
「北朝鮮当局によって拉致された被害者等の支援に関する法律」(拉致被害者支援法)施行(平成27(2015)年に改正) |
平成18(2006)年 |
「拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題への対処に関する法律」(北朝鮮人権法)施行 |
(2) 現状と課題
平成14(2002)年9月の日朝首脳会談において、北朝鮮は長年否定していた日本人の拉致を初めて認めて謝罪し、再発の防止を約束しました。政府が認定している拉致被害者は17人ですが、これまでに帰国した5人を除く拉致被害者の安否については、いまだ北朝鮮当局より納得のいく説明がされておらず、政府は、拉致被害者の即時帰国、真相究明及び拉致実行犯の引渡しを強く要求しています。
政府が認定している拉致被害者(17人)のうち、原敕(ただ)晃(あき)さんは、宮崎県内で拉致されています。また、民間団体の「特定失踪者問題調査会」では、拉致された疑いが否定できない失踪者(特定失踪者)として、本県関係者4人を含むリストを公開しています。
このような拉致問題等の真相を究明し、早期に全面解決するためには、県民一人ひとりが拉致問題等に対する関心と理解を一層深めていくことが重要となっています。
(3) 施策の方向
ア 国の施策等に関する要望活動
全国知事会や九州地方知事会、都道府県国際交流推進協議会を通じ、拉致問題の解決を求める国への要望を行います。(商工観光労働部)
イ 拉致問題に関する地方自治体ネットワークへの参加
新潟県の提唱により、平成18(2006)年に発足した「拉致問題に関する地方自治体ネットワーク」に参加し、拉致問題についての情報交換等を行います。(商工観光労働部)
ウ 広報活動
市町村・関係団体等とも協力し、「北朝鮮人権侵害問題啓発週間(12月10日~16日)」を中心に、啓発ポスターや啓発懸垂幕の掲出、県の広報誌やマスメディアを利用した広報、拉致問題に関する写真展などを行います。(商工観光労働部)
エ 相談等
拉致に関する相談の受理、拉致に関する情報の収集等を行います。(警察本部)
オ 学校教育
北朝鮮による日本人拉致問題啓発の視聴覚教材等を活用して、児童生徒の発達段階に応じて、拉致問題等についての正しい理解と認識を深めるための取組を推進します。(総合政策部、教育委員会)
カ 帰国した被害者等に対する支援
(1) これまでの取組
国際社会の取組
年 |
取組等 |
令和元(2019)年 |
「仕事の世界における暴力及びハラスメントの撤廃に関する条約」の採択 |
国の取組
年 |
取組等 |
令和元(2019)年 |
「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」改正 ※職場におけるパワー・ハラスメントについての防止措置が事業主に義務づけられた |
令和4(2022)年 |
パワー・ハラスメントの雇用管理上の措置義務について中小事業主においても義務化 |
(2) 現状と課題
企業等は、社会を構成する一員として、職場における人権が尊重される環境づくりを推進していくことが求められています。
しかしながら、長時間労働や過重労働、職場におけるパワー・ハラスメント、セクシュアル・ハラスメント、妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント(マタニティ・ハラスメント[1])等の各種ハラスメントが今も続いており、国籍や障がい、性的指向や性自認等を理由とした差別や偏見、不当な取扱いに加え、職場における立場を利用した性加害等も新たな問題となっています。
そのほか、従業員等が、顧客等からの暴力や暴言、過剰な要求や悪質なクレーム等の著しい迷惑行為を受ける、いわゆるカスタマー・ハラスメントが近年問題となっています。
国においては、「男女雇用機会均等法及び育児・介護休業法」において、セクシュアル・ハラスメントや妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントに係る規定が一部改定され、職場でのハラスメント防止対策の措置に加えて、労働者が事業主にハラスメントの相談をしたこと等を理由とする事業主による不利益取扱いが禁止されるなど、ハラスメント対策が強化されています。
また、働く人がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現する働き方改革を総合的に推進するため、平成31(2019)年4月より順次、長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保等のための措置が講じられています。
誰もが安心して、やりがいを持って働くことができる職場づくりを推進していくことが求められています。[1] マタニティ・ハラスメント:職場において、妊娠を理由にした本人が意図しない配置転換や解雇、雇い止め、自主退職の強要、育児休暇取得承認の拒否、妊娠しないことを雇用条件とする不当な扱いなど、働く女性への妊娠・出産に関する嫌がらせ。
(3) 施策の方向
企業は、事業活動を通して従業員や取引先をはじめ、直接的・間接的に様々な人と深く関わっており、社会を構成する一員として責任ある行動を果たすことが求められています。
各種ハラスメントの防止や、仕事と生活の両立に配慮した安心して働くことのできる職場環境づくりを推進するため、以下のような施策の推進を図ります。
ア 啓発・研修の推進
人権が尊重される職場づくりを推進するため、労働局等の関係機関と連携し、企業等に、各種ハラスメントの防止をはじめとする研修の実施を働きかけます。
また、人権担当者を対象とした講座等の開催による研修指導者の養成、企業等が取り組む研修に対する啓発資料や教材の提供、研修講師の派遣・斡旋など、企業等の研修・啓発の取組を支援します。(総合政策部、商工観光労働部)
イ 相談・支援体制の充実
各種ハラスメントを防止するため、労働局等の関係機関と連携し、職場における相談体制の整備を推進します。
また、県民から各種ハラスメントに関する様々な相談について適切に対応できるよう、各相談機関の相談員に対し、研修を実施するなど、相談体制の充実に努めます。(商工観光労働部)
ウ 公正な採用選考の推進
企業等が従業員等を採用するにあたっては、本人の資質・能力に関係がない理由で不利益を受けることがないように、人権を尊重した公正な採用選考の確立を図り、就職の機会均等が図られるよう、労働局と連携しながら、企業等への啓発に取り組みます。(総合政策部、商工観光労働部)
エ 仕事と生活の両立支援と働き方の見直し
企業等に対して、育児・介護等をしながら就業を継続できる職場環境の整備に向けた働きかけや、長時間労働防止のための啓発等に関係機関と連携して取り組みます。
また、企業等において、仕事と生活を両立しやすい環境づくりを進めるため、両立支援に積極的な企業の紹介や両立支援制度等の情報提供を行うとともに、仕事と生活の両立が可能となるよう、講演会の開催や広報誌等への掲載による周知広報により、働き方の見直しや多様な働き方について、理解の促進を図ります。(商工観光労働部)
これまで述べてきた人権問題のほかにも、アイヌの人々などの問題や災害等に起因する人権問題(東日本大震災に伴う人権問題等)、ホームレスの人権、人身取引など様々な課題が存在しています。
その他の人権に関する課題においても、差別や偏見をなくし、一人ひとりの人権が尊重されるよう、国や市町村、関係機関等とも連携を図りながら、それぞれの問題の特性に応じた人権教育・啓発の推進を図ります。
(1) アイヌの人々
アイヌの人々は、古くから北海道を中心に日本列島北部周辺に居住していた先住民族であり、独自の伝統・文化を持って暮らしてきましたが、明治維新以降の同化政策により、伝統的な生活習慣等が禁止されました。
近年、アイヌの人々を中心に伝統文化を見直し、復活させる動きが広がっていますが、アイヌの人々に対する正しい理解が十分ではなく、様々な偏見や差別が残っています。
(2) 災害等に起因する人権問題(東日本大震災に伴う人権問題等)
平成23(2011)年3月11日に発生した東日本大震災及びこれに伴う東京電力福島第一原子力発電所の事故では、避難や転居を余儀なくされた人たちに対する根拠のない風評に基づいた思い込みや偏見による差別、学校や職場等でのいじめ・嫌がらせ等の人権侵害が発生し、今なお苦しんでいる人がいます。
また、災害時には、子どもや高齢者、障がい者など、社会的に弱い立場にある人々や避難所運営における女性への配慮、プライバシーの問題などがあります。
(3) ホームレスの人権
経済的な事情等様々な事情により、公園や道路などでの生活を余儀なくされている人々がいます。ホームレスの人々に対しては、偏見等により、嫌がらせや暴行事件などの人権侵害が起こっています。
(4) 人身取引
性的サービスや労働の強要等の人身取引は、重大な犯罪であるとともに、被害者に対して深刻な精神的・肉体的な苦痛をもたらす基本的人権を侵害する重大な問題です。
第4章 方針の推進
基本方針の総合的かつ効果的な推進を図るため、関係部局相互の緊密な連携・協働の下に全庁的な取組を推進することとします。
なお、各部局は、基本方針の趣旨を十分に踏まえて、施策の実施に当たることとします。
基本方針に基づく人権施策の推進を図るために、国や市町村との役割分担を踏まえつつ、密接な連携・協働の下に全県的な取組を進めていきます。
特に県民にとって一番身近な行政機関である市町村において、地域の実情に即して行われる人権施策は、より大きな効果が期待されることから、情報の提供、事業の支援等、その連携・協働の強化に努めます。
人権問題が複雑化・多様化する中、基本方針に基づく人権施策を総合的に推進するために、民間団体との連携・協働に努めます。
特にNPO等は個別課題に柔軟に対応できるなど優れた特性をもっていることから、様々な要望に対応した人権施策を実施するためにNPO等の自主性や自発性を尊重しながら、その連携・協働に努めます。
基本方針の目標を達成するため、毎年度、基本方針に基づく施策の実施状況を点検・公表し、その結果を以後の施策に適正に反映させるように努めます。
また、今後の人権問題を取り巻く国際的な動向や、国の状況及び社会情勢の変化等へ適切に対処するため、県民の人権に関する意識の状況を把握し、必要に応じて基本方針の見直しを行います。