じんけんインタビュー 糸数智美さん

スマホやゲーム機など電子メディアのあふれる今、子どもたちの豊かな育ちを守りたいと発足した「子どもとメディアみやざき」。代表で小児科医でもある糸数智美さんにお話をお聞きしました。

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糸数智美さん プロフィール写真
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2010年頃からスマートフォンが普及し始め、子育ての場にもデジタルデバイスが入り込んできました。授乳中のお母さんがスマホを見ていたり、子どもがぐずればタブレットを見せたりする。私の診療所でも以前は待合室で、親子で絵本を読む姿があったのですが、急速にスマホに取って代わられました。そんななか、2017年に「子どもとメディアみやざき」を発足させました。現在、子どもや保護者向けの講演会や研修会、学校での実態調査などを行っています。

学校のアンケートで分かってきたのが、スマホを所持している子どもの低年齢化です。小学校1年生の4人に1人、3年生の3割がスマホを持っています。小学3年生で、ネットで知り合った人と実際に会ったことがあると答えた子が約10%いるという驚きの結果もあります。幸い、犯罪やトラブルに巻き込まれたという回答はありませんでしたが。

子どもたちには、ネット上のやり取りというのは、とても情報不足になりやすいと伝えています。直接会って話すときの100分の1くらいしか相手に伝わらない。だから誤解を生みやすく、様々なトラブルの原因になると。一時の感情にまかせて、自分の言葉がどんな意味を持つのかよく吟味しないままボタンを押してしまうと、あっという間に世界中に広がります。世の中には自分と違う考え方、感じ方をする人たちがいるということを知っておくなくてはいけません。

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子どもにスマホやタブレットを持たせることは、危険なメディアの荒波に突き落とすようなものです。大人の皆さんは、与えっぱなしではなく、子どもたちがデジタル機器をどう利用しているのか、しっかり見守るという姿勢を忘れないでほしいと思います。最初に与えるときが一番大事で、「あなたのことが大切だから、危険なことに巻きされないようにしようね」と、指示や命令ではなく、合意のもとにルールを決めておくことが大事です。

無関心がもっとも危険です。自分が買い与えておいてトラブルが起きてから子どもを責めて取り上げる、これは一番やってはいけないことです。リアルな場に自分の居場所がなく、ネットの世界だけで命をつないでいる子もいます。そういう子からスマホやゲームを取り上げるといった間違った対応はくれぐれもしないようにして、どうやったら子どもを守っていけるかということを、ぜひ真剣に考えていただきたい。今は電子メディアなしでは生きていけない世の中ですから、ただ否定するのではなく、子どもの体と心の健康を最優先に考えたメディア利用を大人の皆さんにも心がけてもらいたいと思います。

ある女の子が寄せてくれた感想を紹介します。「私のスマホは通話しかできないように設定されています。今日のお話を聞いて、親が私のことを大切にしてくれていたのだとわかりました。親に感謝したいです」。

ワタシノオシ!
活字を読むこと

料理本から小説、絵本、雑誌など「読む」「観る」が大好きです。自分の知らない世界が詰まっていて、紙質や重み、匂いなど五感の記憶とともに人生を豊かにしてくれます。本に囲まれて過ごす時間は、森林浴をしているような至福の時です。